日差しが強い。
カイナシティの浜辺で借りたビーチパラソルの下、年下のやつらが波打ち際ではしゃいでいるのを名前と見つめる。
名前の手には海の家で買ったサイコソーダ。
からんと音が鳴るところを見るに、ラムネのように中にビー玉が入っているのかもしれない。
バッジはいつの間にか2つになっていた。
ムロタウンでのバトルや洞窟での冒険を経て、アチャモはワカシャモに、ラルトスはキルリアに。
キノココは確かにレベルは上がっているがまだ進化はしていない。
名前は「暑いね~」なんて呑気にサイコソーダを傾ける。
そうだな、今日はやけに日差しが強くて眩暈がするほど暑い。
空がいつもより青い。
パラソルの下で名前は空になったサイコソーダの蓋を捻った。
ミナモデパートではこんな形の容器じゃなかったな、海の家だから容器も変えているのだろうか。
「見てルル、青いビー玉だった!」
『そうか』
年より少し幼いはしゃぎ方をする名前の姿に自然と口元が緩む。
甘いソーダで少しベタベタするそれをまるで宝物のように持つ名前がパラソルの下から出た。
親指と人差し指でビー玉を持つと太陽に翳す。
キラキラと、太陽の光がビー玉を通して煌めいた。
それが楽しいのだろう、手を下ろしてはまた翳す。
そんな名前に気づいた年下3匹が不思議そうに足下に近づいて、見せて見せてと声を上げた。
……子どもか、いや子どもだ。
名前はもちろん、あいつらは俺より年下なんだから、子どもだ。
『アタシが先よ!ひよこは引っ込んでなさい!!』
『僕が先でもいいだろ!もうひよこじゃない!!』
『ふたりとも、名前さまが困ってます』
「えーっと……?」
キノココとワカシャモが取っ組み合いを始め、名前が困惑したように眉を下げる。
それからふたりのを仲裁しようとキルリアに持っていたビー玉を渡し、ギャアギャア騒ぐワカシャモを抱き上げた。
まだワカシャモになったくらいじゃ名前に簡単に抱き上げられるんだろうな、高さなら兄のドンカラスと同じだから余裕だろう。
キノココはふんと鼻で笑い、それにワカシャモが腹を立て──キリがない。
『お前らいい加減にしろ、名前が困ってるだろう』
『だって!』
『こいつが!』
牽制するように唸れば、ワカシャモもキノココも口を噤んで大人しくなる。
大人しくなったワカシャモを下ろし、キルリアからビー玉を受け取った名前は少し身を屈めて大きくそれを翳した。
全員で見ることのできたキラキラと揺らめく太陽の光に、3匹が感嘆の息を零す。
「綺麗だねぇ」
ああそうだな、綺麗だと思う。
そのただのガラスを、綺麗だというお前は。
ゆらゆらと光だけでなく、碧落も揺らめいた。