戦っていて凄くしんどいと思うのは、初めてだ。
特殊なマスクを被っていても呼吸がしづらい。
頭が痛い、目眩がする。
腕にできる胞子嚢にワクチンを打って、迫りくる金塊を火炎放射器で焼き払う。
手騎士の称号のない私は火蜥蜴の召喚はできないし、まだ魔剣との契約もしてないからこうでしか戦えないけど。
今度、手騎士の称号取得しようかな。
少し割り切って、そうすればもう少し強くなれるかもしんない。
「無茶するなよ名前!」
「シュラもね!」
火炎放射器だけでは手が回らない。
火の恩寵を受けた魔法弾が装填されている銃も構えて遠慮なく引き金を引く。
あーくそ、しんどい。
雪男くんはあっちの炎が上がってる方向に行ったのは見たけど、何しに行った?
何かいた?
まあ、何かいてもこの状況じゃ任せるしかないけれど。
それにしても胞子嚢が潰れると痛い。
さらにそこから増えるから、もっと苦しい。
ワクチン追っつかないんじゃないか、これ。
ただでさえ、散る火花で焼かれて痛いんだから。
しっかし焼いてるってのに菌ってどんどん増えるのね……
段々と、建物みたいな形になっていくし、大きな胞子嚢が形成されていく。
やばい、なんとかしないと、やばい。
そんな時だ。
私たちが応戦してるところも含め、不浄王を囲むような、火の結界が展開したのは。
「……すごい」
これなら瘴気が外に出ることはないんじゃないだろうか。
ヒューヒューと鳴る喉を押さえ、空を覆う炎を見つめる。
あの不浄王の胞子嚢が割れる前に、結界がある間に、なんとかしなくては。
そう思って足を踏み込み、一息吸った時、胸に激痛が走った。
息が、できない。
構えていた火炎放射器と銃を落とし、その場に膝から崩れ落ちる。
胸が痛い、頭が痛い、息ができない、気持ち悪い、くらくらする、やばい。
目の前に菌塊が迫っているのに、みんなが戦っているのに。
「名前!」
シュラが私を呼ぶ声だけ届いて、そのまま倒れ込んだ。
…………空に、メフィストがいたような、気がする。
いつもいつも癇に障る表情しやがって。
次第に視界が暗くなって、そのまま意識を失うのは早かった。