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見つめ合う

「あ、の……アーサーさん……?」小さな唇が動く度に自分の唇に息がかかった。悪魔との戦闘でついたのか、それとも体調が悪くてついたのか、乾いてる血を親指で拭うように撫でる。いつからだろう、こうやって彼女が気がかりになってきたのは。保護する必要の…

記憶喪失になった聖騎士 後日談

──あなたが受けたのは一番愛しい人の記憶を失うといった類の魔障です。上一級祓魔師には詳細をお伝えしてはいませんが……彼女、当初は酷く取り乱していましたから、ちゃんと労わってあげてくださいねあどけない表情で穏やかに眠っているの頬を撫でながらそ…

記憶喪失になった聖騎士④

目を覚ますと見慣れたヴァチカン本部の医務室だった。いつもの匂い、いつもの室温。瘴気で段々とボロボロになっていく肺に酸素を送るための酸素マスク。違うのは全身が、特に脇腹がズキズキと痛むこと。それから、右手の温かさと窮屈さ。何があったんだっけ……

記憶喪失になった聖騎士③

大分心がボロボロになってるのがわかる。ボロボロのズタズタ、ボロ雑巾もいいとこだ。あのカリバーンが私を慰めるんだよ?相当酷い顔をしてる、鏡の中の私は酷い顔だ。エンジェルさんが記憶喪失になって早1週間。戻る兆しは、ない。なのにライトニングさんは…

記憶喪失になった聖騎士②

医工騎士が言うには、今回討伐対象だった悪魔の攻撃の影響で一時的に記憶喪失になっているらしい。けれど、過去にはその記憶が戻らないままの人もいた、医務室を飛び出た私が、冷静じゃない頭のまま調べたからもしかしたら抜けがあるかもしれないけど、けど……

記憶喪失になった聖騎士

やめた方がいい。そう言われた時点で冷静になって、一度引くべきだったのだ。──エンジェルさんが負傷した。その報せで私が慌ててシュラと医務室に向かうと、医務室の前でまるで私を待っていたかのように待機していた医工騎士が苦い顔をしていた。エンジェル…

さよならの下準備

※未来の話「……おまえ、また痩せた?」シュラが咳き込む私の背中を擦りながら怪訝そうに顔を覗き込んだ。高校生の頃よりも髪は白く、目は濁り、体は細くなっていく。もう武器の斧なんて震えないし、銃だって持てない、そもそも戦えない。祓魔師を引退して、…

愛のためなら地位なんてくれてやる

※くっ付いた後のお話※が正十字学園を卒業した設定「君と本部で会うときは医務室が多いような気がする」「……多分、多いかなーなんて……」「……」ベッドの上で起き上がり、苦笑を浮かべるの腕には見慣れた点滴。ついでに今回は怪我もしたのか襟からは包帯…

聖騎士の悪夢

「わた……し、エンジェルさ……に、終わらせてほし……い」途切れ途切れの苦しげな声。悪魔に憑依された状態のが自分の体を抱きしめるように抑え、伸びた爪をコートの上から腕に突き刺す。彼女のミスとか、油断したとか、そんな理由で憑依されたのではない。…

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正十字学園の制服に袖を通す。左肩から手首には見事に刺青が刻まれていて、それを隠すために包帯をした。もう少し腫れが引いたら包帯じゃない何かにしようかな、体育の時に目立ちそうだけど。ブラウスのボタンを留めて、スカートを履いて、ニーハイ履いて、ロ…

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左の肩から手首にかけての激痛で目が覚めた。年頃の女の子にしては酷い声を出したと思う、医工騎士の人たちが何人か駆けつけてくれたから。痛い痛い痛い痛い。なんでこんなに痛いんだっけ?焼ける。焼けるような、そんな痛み。苦しい苦しい。ぼろぼろと涙が溢…

8

シュラさんよりも細い腕でその大きなものを持ち上げた彼女は自分自身で感嘆の声を上げた。とある教会から引き取ってほしいと言われたらしい、刃に赤錆ではない赤い汚れのついた大きな斧。さんの身の丈以上のそれは、男性祓魔師が二人がかりで持っていたはずだ…