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シュラさんよりも細い腕でその大きなものを持ち上げた彼女は自分自身で感嘆の声を上げた。
とある教会から引き取ってほしいと言われたらしい、刃に赤錆ではない赤い汚れのついた大きな斧。
名字さんの身の丈以上のそれは、男性祓魔師が二人がかりで持っていたはずだ。
なのに、名字さんはひとりで軽々と持っている。

「重くないんですか?」

「全然。むしろ手に馴染むというか」

確かに少し重いけれど、ひとりで持てない重さじゃない。
不思議そうにまじまじと名字さんは斧を見つめた。
フェレス卿も感心したように見てるし、シュラさんは目を丸くしている。
名字さんはそれの刃の部分を下にして柄を持ち、説明を求めるような目で四大騎士の彼を見た。

「うんうん、大丈夫そうだね」

「なんですか、これ」

「とある協会から渡されたものでね、曰く付きのものなんだって」

誰も扱えなさそうだから君に預けるね。
その言葉の後に、男性祓魔師が名字さんに声をかける。
収納のための刻印が、やら、刺青がどうの、と話しているところを見ると、まるで最初から彼女に持たせることが決まっていたかのような……そんな印象だ。
柄の根元を持ち、祓魔師の案内に従って名字さんはこの場を去っていった。

「終わったら日本支部に送っていくよ」

「華奢な彼女には不相応な斧でしたね」

聖騎士である彼の推薦だから、なんて理由でよくわからない斧に触れるのはどうしてだったんだろうか。
シュラさんが頭を抱えて溜め息を吐くのを見て、名字さんの向かった方向へ視線を戻した。

2023年7月28日