諏訪洸太郎とご飯

「名前、飯食ってこうぜ」

コウタの指すファーストフード店を見て首肯した。
今日はまた一段と冷える。
お互いに授業は午前中だけだったし、今日はボーダーの防衛任務も非番。
二人揃って手袋をしてないから私の右手とコウタの左手を繋いだままファーストフード店に入った。
明るめの「いらっしゃいませー」という声を聞きながらメニューを見る。

「セット?」

「おう。名前は?」

「セットとこのナゲットとパイ食べたい」

「あー、ナゲットはオレも食う。あとハンバーガーもう1個」

それを店のカウンターで注文して出来上がるのを待った。
寒い、そう呟くコウタがマフラーに顔を埋める。
まあ客席まで行かないと暖かくないだろう。
それなのにコウタはセットの飲み物はコーラにしてなかったか、しかもサイズアップして。
目の前のトレーにどんどん品物が置かれていくのを見ながら客席の方へ視線を向けた。
うん、じゃああそこかな。
カウンターの脇に置いてある灰皿を1つトレーの空いてるところに置く。

「お、空いてた?」

「空いてた」

「じゃあそこだな」

お待たせしましたー、の声と共に渡されるのは2つのトレー。
どうやら量が多くて分けたらしい。
私が1つ受け取る前にコウタがドリンクが2つ乗ったトレーを持った。
ありがと、と言ってもう片方のトレーを持ってコウタについていく。
私たちが向かったのは、今では数少ない喫煙席。
けっこう貴重に感じるからか、この店はよく使う方だ。
窓際の席、コウタがテーブルにトレーを置いて私の持つトレーを受け取った。

「ん」

「ありがと」

そのまま奥の席に腰掛けてコートを脱ぐ。
教科書が2冊入った鞄を横に置いて一息。
あったかい。
コウタも私の横に荷物を置いてから向かい側に座った。
じゃあ、いただきます。
大学の授業の話とか、新しくできたお店の話とか、ランク戦の話とか、そんな話をしながらハンバーガーを食べていく。
ゆっくり食べてる私とは逆に、ハンバーガー2つ目に突入したコウタの顔を見て「あ、」と声を出した。

「口の横ついてるよ」

「マジか」

「ん」

服の袖で拭おうとしたコウタより先に手を伸ばす。
人差し指でケチャップを取って、自然とそれを自分の口に持っていって咥えた。
コウタはぽかんとした顔で私を見ると、少しだけ頬を染める。

「あのなぁ……お前それ無意識?」

「あ、多分」

「あんまりやるなよ、人の目の多いところで」

ちゅ、と音を立てて口に入れた指を出して、ペーパーで拭いた。
ちらりと少し周りを見渡すと、ちらちらこちらを見る目がある。
あー、このバカップルとか思ってそう。
あったかいコーヒーを1口飲み、目の前に差し出されたものに視線を向けた。
ケチャップを付けたポテトがこちらに向けられている。
遠慮なく食いついた。

「たまには悪くないな、こういうのも」

「そうだね」

「風間とかレイジ誘うか?」

「絶対いやだ」

だって2人だからいいじゃんか。

2023年7月28日