宝月茜が起こしてくれる朝

※茜と同居している

目を覚ますと、相変わらず気の抜けるような寝顔の名前が目の前にいた。
すぴょすぴょと、可愛らしい寝息に心が安らぐ。
いつもお団子に纏められている髪は、その癖がついているのか少しウェービーだ。
名前の柔らかい頬をむにむに弄りながらベッドサイドに目を向けた。
目覚まし時計はいつもより少し早い時間。
朝ご飯作らないと。
名前の頬から手を離し、そのままゆっくりとベッドから抜ける。
名前は朝のコーヒーは濃いブラックだ。
その方が目が覚めるんだとか。
……とても苦い顔をして飲んでいるけどね。
さっと顔を洗ってから、簡単に薄く化粧をしてキッチンに立った。
ヤカンに火をかけて、インスタントコーヒーの準備をする。
ええと、トーストでいいかな?
とても手軽にできる朝食を用意して、まだ名前が寝ている寝室へ。

「名前、朝ご飯できたよ」

「ん、んー……もうちょっとぉ」

声をかけるともぞもぞと布団の中に潜った。
疲れているのはわかる。
私の何倍もあちこち駆けずり回っているから、彼女は気にしてなくても体の疲労感が抜け切らないのだろう。
でも、もう朝だ。
これから私たちは署に出勤しなくてはいけない。
また事件があれば駆けつけて、証拠品を探して、犯人を捜して、捕まえないといけない。

「名前」

「あかねちゃんがちゅーしてくれたらおきるぅ」

それに、こうやって穏やかな時間が続くとは限らない。
名前は以前、犯人に殺されそうになっていたし、そんな状況がまた彼女に降り掛かったり、私に降り掛かったりしてもおかしくないのだ。
えへへ、とだらしなく笑っている名前に溜め息を吐いて、身を屈めた。
その柔らかい頬に唇を寄せる。

「おはよう名前」

「おはよぉ茜ちゃん」

こんな穏やかな時間が続いてくれるなら、どんなに幸せなのか。
起き上がった名前の手を取って、ダイニングへ歩みを進めた。