02

改札口の柵に突っ込むように抜けるとそこはプラットホームでした。
意外とたくさんの人たちがいる。
ホグワーツへ行くのはこの汽車らしい。
見送りのためだけに仕事を休んだ父さんと母さんは慣れたように進んでいく。
慌ててカートを押しながらついていく最中、やけに視線を感じた。
多分、日本人だからじゃないかな?と父さんはからからと笑って私からカートを取る。

「東洋人は多いわけではないからね。父さんたちのように同じ時期に日本人が2人いたのは珍しかったよ」

「へえ……」

「父さんは英語できなくてね、母さんによく翻訳魔法をかけてもらって、教えてもらってた」

カートの荷物を預け、父さんが苦笑すると母さんが肩を竦めた。
なるほど、だから早めに私に英語教えて、あれを翻訳魔法のかかったアクセサリーにしてくれたのか。

「さあ、早めに乗ってコンパートメントをとりなさい。何かあったらソラに手紙を持たせるといいよ。普通のシャーペンやレターセットもあるからそれでもいいし、ああ、名前のサッカーボールは学校に慣れた頃に送ろう。魔法界ならではのスポーツもあるからそれもおすすめするよ。……大丈夫、父さんと母さんの子なんだ。自信持って、頑張って」

「うん」

「悪戯されたりやなことされたら遠慮なくいつもみたいにやり返しなさい。外国なのと学ぶのが魔法についてなだけで日本の学校と変わらないのだからね。怪我させても校医さんならすぐ治せるし、いい?やり返す時は容赦しなくて、いいからね?……寂しくなるわ。アンタは聞き慣れないでしょうが、母さんも父さんも名前のこと愛してる。気をつけて、元気で」

「……うん」

母さん物騒だな、とか思ったけど父さんのように私を心配してのことだから、むしろいつも通りで少し気が楽になった。
最後に2人にぎゅっと抱きついて「いってきます」と口にする。
汽車の中で車内販売もあるだろうけど無駄遣いはしたくないからと、持たせてくれた鞄の中にお菓子やお昼のおにぎりが入っていた。
あと、長旅だから暇つぶしの小説とナンプレの本を。
後ろ髪を引かれる思いで汽車に乗り込み、近くの空いているコンパートメントに入る。
窓から顔を出して、手を伸ばして父さんと手を握った。
そして笛が鳴る。

「名前、いってらっしゃい!」

「体に気をつけるのよ!」

「うん!──いってきます!!」

段々と加速していく汽車。
駅が見えなくなるまで窓から顔を出して、手を振っていた。