アジトに帰るとなんだか騒がしかった。
のりあきくんは多分いつもの部屋にいると思うんだけど……なんでこんなに賑やかなんだろう。
お土産あるのになぁ。
まあいっか、いつものようになんとかなるだろう精神でのりあきくんのいる部屋に行こうと足を進める。
「名前さん、まずいっス……!あの城ヶ崎が来ているんスよ!」
「じょうがさき……?」
誰それ?
生憎、のりあきくんとこの比遊怒羅のメンバー以外に興味はない。
聞いたことあるようなないような名前に首を傾げたけど、わたしには関係ないよね。
へーそうなんだー、なんて言いながらみんなが制止するのを素通りしてのりあきくんのいる部屋に入った。
ただいまー、と扉を開ければのりあきくんと、あと知らない男の人がふたり。
どっちかがその〝じょうがさき〟なのかな。
あ、のりあきくんケガしてる?
おい、と刺青たくさん入っている方の人に声をかけられたけど、さっきのように素通りしてのりあきくんのところまで行けば、のりあきくんは大きく息を吐いた。
なによ、そのまた名前がやらかしたのかって言いたそうな顔は。
「のりあきくん、ただいま」
「……お前のそういうところは素直に凄いと思うよ」
おかえり、とわたしの肩を抱いたのりあきくんが眉根を寄せる。
痛くない?なんか珍しく大きく切られちゃっているけど、大丈夫?救急箱持ってこようか?
せっかくの服が台無しになっちゃったね、と話しているとのりあきくんは困ったように笑いながらふたりの男の人を指した。
「名前、今から比遊怒羅は羅威刃に入る。大将の城ヶ崎さんだ、あと東雲」
「……設楽、なんだその女は」
「名字名前、俺のです」
「名字名前です。じょうがさきさんよろしくお願いします」
のりあきくんが決めたんなら問題ないよね。
怪訝そうな顔をするじょうがさきさんとしののめくん。
そんな顔されたって、これがわたしとのりあきくんのペースだからなぁ。
じょうがさきさんとしののめくんはのりあきくんと何か話し、それからアジトから出て行った。
でものりあきくんが人の下につくの本当に珍しいね、ケガするより珍しいんじゃない?
ふとデスクを見れば、たくさんの一万円札……これいくらくらい?一億ある?
「お金でのりあきくん買われたの?」
「言い方。定期的にその額が入ってくるなら悪い話じゃないだろう?それに最近名を挙げている羅威刃だ、箔がつく」
なるほどわからん。
のりあきくんといる時間は誰よりも長いつもりだけど、わたしはややこしい話は苦手だ。
もっとシンプルがいい。
まあいっか。
とりあえずのりあきくん、ケガの手当てしちゃおうよ。
わたしがそう言うと、ソファーに腰かけたのりあきくんが当たり前のようにサスペンダーから腕を抜いてシャツを脱いでいく。
わあ、なんかこういうの前にやったらあやのこうじくん凄い勘違いしなかったっけ?
棚にある救急箱を手にして消毒液を取り出した。
「のりあきくんがケガするってことは、あのじょうがさきさんは強い人?」
「……そうだな」
「のりあきくん天才なのに?」
「ああいうタイプは敵にすると厄介だ。太いものに巻かれろって言うだろう」
「なるほど」
誰かに従うのりあきくんがとてもレアキャラだなぁ、なんて思いながら胸の傷にそっと消毒液を沁み込ませたガーゼを当てていく。
痛そうに顔を歪めるのりあきくんに大丈夫?と顔を近づけると、なんだか見たことのない顔をしていた。
「……」
「……」
「……痛い?」
「……痛い、な」
どうやら天才も痛いものは痛いらしい。
それが、体だけなのかわからないけれど。
薄皮一枚切れただけでよかったね、と言えばのりあきくんは大きな溜め息を吐いた。