手折られた桜について
御前の命で櫻田さんが攫ってきたのは俺や冬馬と同じくらいの女だった。加えて女の家族も皆殺しで、家も焼き払えってことだから相当な思い入れでもあるのか。可哀想に、どこで御前に見初められたのか、どこであの家族が逆鱗に触れたのかはわからないけれど。綺…
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燦燦とした陽だまりは誰のために
裏社会で生きてきた人間にはある種の毒みてえなモンなんだろうなと思った。俺はまだ恵まれている。自分の容姿や力を自覚して、親父に道を示してもらってここまで来た。生まれた時から剣は身近にあったけれど、それで誰かの命を奪うことは強要されなかったし、…
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甘受の先
静かに開いた障子、音なく畳を滑る足、いつもより動かない表情、冷たい目。いつもとは違う雰囲気に思わず息を飲む。御堂さんは静かに後ろ手で障子を閉めると、畳を滑るように私のところへやってきて隣に腰を下ろした。何かあったのかな……いつもより表情が険…
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手折った男に触れる手は
御堂さんは今回私を置いて出かけて行ったのでちょっとだけ羽が伸ばせますやったね!周防くんにはわかりやすいって言われた、いや別に私はアサシンでもなんでもないただの人間なのでわかりやすくても困りませんけど?何この人喧嘩売らなきゃ生きてけないの?羽…
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誰が為の桜か
縁側へ行こうとして障子を開く。夜も遅い、今日は珍しく御堂さんも来ないからちょっとくらいお月見みたいなのをしてもいいかな。埃ひとつない場所を這うようにして移動し、縁側に腰かけた。満月ではないけれど、くっきりと月が見える。昼間は暑かったけれど、…
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手折られる前も美しい
その娘の柔らかな表情に柄にもなく惹かれた、有り体に言えば心を奪われたのだ。家は前々から声をかけているが、なかなかいい返事をもらえたことがない。由緒正しい旧華族、現在ではほとんどが政治家として政界に関わる家だ。そんな家を含め、政界に関わる人間…
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孕んだ鎖は解けない
※もしも身籠ったら、の話 「ごめん榊くん、使って申し訳ないんだけどトイレまで運んでほしい、ダッシュで、なるべく揺れないように」「すげー無理難題言うじゃん」でもちゃんと揺れないようにしてくれるのは助かる、本当に。ここのところ、体調が…
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鰭がないと泳げない
思えば、浅はかだったんだと思う。この人がどんな人なのか、私に対してどんな感情を抱いているのか。あまりにも知ろうとしなかったし、でもその結果がこんなのはあんまりだと思うし。膝を抱え、久しぶりにじくじくと痛む足首を掴む。もう傷そのものは塞がって…
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乖離と甘受
「おそらく風邪ですね。最近冷えてきましたしここでの生活にも慣れて気が抜けたかと。念の為解熱剤と胃腸薬を処方しましょう、とりあえず一回分はここに置いておきますから何か食べてから飲んでくださいね。残りは後で届けさせます」お大事に、と出て行った往…
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