今まで彼女とクリスマスを過ごしたことがなかったからとても浮足立っているのを自覚する。
どこに行こうか、どんなものを見に行こうか。
ふたりで話して決めたのは、クリスマスマーケット。
都内のクリスマスマーケットではなくて、横浜の赤レンガ倉庫でやるクリスマスマーケットがいいとちょっと照れくさそうに言った名前はすっごく可愛かった。
そして当日、せっかくなら少し遅く出てイルミネーションも見たいね、と昼過ぎにクリスマスマーケットへ。
夕暮れ時なのにこんなにも人が出ているものなんだなあ。
チケット代わりのリストバンドを巻いて会場へ入り、名前の手を離さないように握ってひとつひとつ店を回る。
名前の目がとてもキラキラしていて見ているだけでとても楽しい、名前の目が特に輝くのは飲食関係のドリンクメニューを見る時だけど。
クリスマスならではのメニューに思わず感心した。
ホットココアやホットチョコレートの上にホイップクリームを乗せて、マシュマロやカラースプレー、アラザンでデコレーションされている。
アルコールもシンプルにビールやグリューワインもあればアイヤープンシュなんて凝ったものも。
それと一緒にプレッツェルやヴルスト、ビーフシチューを食べたら美味しいんだろうな。
さて、お酒が気になっている彼女のために、先に何か食べようか。
「名前、何がいい?」
「ビールにしようかグリューワインにしようか悩んでる……」
真面目に考える顔も可愛い。
まあ飲み放題って場所じゃないからね、それひとつでゆっくり楽しむところだから。
うんうん悩んだ名前はグリューワインがいい、とひとつの店を指した。
俺も同じ店のクラフトビールにしようかな。
それぞれ飲み物を手に、でもしっかり手を繋いでゆっくりと場内を歩く。
クリスマスならではの品に名前が足を止めるので、その度に一緒に足を止めて見るのが楽しい。
キャンドルライトやオーナメント、リースやスノードーム。
冬だからか乾燥しないように保湿クリームだったり、シュトーレンやナッツ類にチーズの持ち帰りもある。
チーズかあ、酒のつまみにぴったりだろう、買っておいて今度名前を家に呼ぶのだってありかもしれない。
「何か気になるものあった?」
「スノードームいいなって思った、吏来は?」
「チーズとナッツかな」
お互いにらしいね、と笑ってまずは名前が見たいと言っていたスノードームの店へ足を運ぶ。
おお、いろんな大きなのスノードームがあるんだなあ。
飲んでいる途中のグリューワインを持ってやれば、名前は小さいスノードームをそっと手にしてそれを揺らした。
雪を模した装飾がドームの中で舞い上がり、やがて降雪のように落ちてくる。
へえ、スノードームっていうともう少し大きいのをイメージしていたけれど、これだけ小さいのもあるんだな。
名前の小さい手に小さいスノードームがあるの可愛いなあ。
ドームの中身はクリスマスらしく、雪だるまやクリスマスツリー、サンタクロースやトナカイが多い。
中にはこの会場限定らしく、赤レンガ倉庫に雪が降るようなものもあった。
「ねえ吏来、どっちがいいかな」
正直どっちもいいよねって言いたい。
けれどここでどっちもなんて言葉は余計に名前を困らせてしまう。
名前が手にしているのは、一番小さいスノードームとそれより少し大きいスノードームだ。
中に入っているのも小さい方は雪だるま、大きい方はクリスマスツリーとサンタクロースと違いがある。
どっちも名前が気に入ったやつなんだろうな……さて、なんて答えたら名前はもっと笑ってくれるだろうか。
「サイズで悩んでいるの?」
「うん。小さいのも可愛いし、大きいのも可愛いし……」
「どっちもは?」
「欲張りさんかなって……」
あーかわいい。
思わず頬が緩む。
唇を尖らせて悩む名前が手にするスノードームを揺らした。
「じゃあ、俺小さいのほしいな。名前は大きいのでどう?」
せっかくだから、思い出って分かち合いたいものじゃない?
俺の言葉に名前は表情を輝かせる。
お店の人にふたつのスノードームを渡して、会計をしている背中からも嬉しそうにしているのが伝わってきた。
あーかわいい、本当に好きだなあ。
可愛らしい紙袋に梱包してもらった名前が笑顔でこっちを見る。
とても楽しそうだし、そんな名前を見ているだけでも俺は楽しい。
持っていたグリューワインを渡して、今度は俺が気になったところ見ようよ、と手を差し出せば頷いた名前が手を重ねてくれた。
