既にヘトヘトでぶっ倒れそうなんですけど。
なんなの、なんで私がこいつら3人に個性使わなきゃいけないの?
つーかそう何人もできないって言ったのに聞かないし。
目眩がする。
今すぐぶっ倒れたいけど死柄木が私を胸倉を掴んでいるからこれは倒れたら苦しいやつだ。
マジかー、もうやるべき仕事は終わったんだから休ませろよブラック会社か。
「死柄木……それが倒れたら解除されますよ」
「それ言うな」
「だからこうやって親切に支えてやってるんだろ」
「親切の意味を辞書で引け」
「じゃあ脳無、パス」
「ボールか何かか私は」
お前らはっ倒すぞ。
自分で立たないと後が面倒なやつだこれ。
死柄木の手を振り払って、よろよろとふらつく足に力を入れる。
……自分の個性って、こんなにつらいものだったっけ?
これから雄英に乗り込むからか、意気込んでいる名も知らぬ輩を横目に見て、深く息を吐いた。
正直、こいつらは生徒にすら瞬殺されると思う。
だって雄英の生徒はさ、言うなればプロヒーロー見習いで、それなりに個性を使った戦闘ができる子たちだ。
そんな子たちにこいつらは勝てないだろう。
有利になってもほんの一瞬。
それに、先生方も舐めたら大怪我するよ。
ヒーローを育てるのはヒーローでしょう?
なにかあったら気づくって、先生たちそこまで抜けてないって。
「名前、お前は俺がいいって言うまで参加するなよ」
「いや参加したくないし」
趣味悪いな。
私が雄英のOGなのをいいことに、先生に揺さぶりかけるなりなんなりするつもりだろ。
……多分、〝先生〟あたりが吹き込んだんだろうな。
死柄木も黒霧も考えそうだけど。
体も心もしんどいわ。
溜め息を吐くと、目があった死柄木は弓形に目を細めた。
笑いやがって、このやろう。
「喜べよ名前。これからオールマイトを殺すのに、お前の恩師たちに会えるようにしてやったんだ、嬉しいだろ」
「……」
「いいねその反抗的な、殺意を秘めた目。父親にそっくりだ」
「いつか殺す」
「やってみな」
どうせ、お前は思うように動けないんだから。
死柄木は鼻で嗤うと、黒霧のつくったワープゲートをくぐっていった。
それに続くように寄せ集めの敵も、脳無も続く。
ああ、もう本当にこれで逃げられない。
「……ちくしょう」