「いつまでそうしてるつもりですか」
「もうちょい」
ごめんね、としょーちゃんに告げてアジトのバーに戻ってきた。
死柄木は傷がまだ癒えないのであまり自分の家から出ないらしい。
必然的に、ここには私と黒霧だけ。
カウンター席で突っ伏してお酒の入ったグラスを眺める。
氷が溶けてカランと音を立て、静かな空間に響いた。
──知ってほしかっただけ、私、ずっとしょーちゃんのこと好きなんだ。だから、ごめんね
もしも、もしも父親のことなんてなくって、ヒーローになっていたら……どんな未来があったかな。
ヒーローとしてしょーちゃんの近くに立てていたねかな、こうやって敵として向かい合わないで。
「辛いですか」
「わかりきったこと聞く?」
「ええ、まあ……憐れだなと思ってはいますから」
「……」
「他人の行動で将来が決まってしまったでしょう」
「その他人にお前も入るからな」
身を起こして頬杖をつき、睨みつけても黒霧は鼻で嗤うだけ。
目も弓形になっていて不愉快だ。
でも酔ったままこいつをぶん殴ったってゲートで避けられるだけだから我慢する。
氷が溶けて量の増えた度数高めの酒を一気に煽り、グラスを黒霧に差し出した。
「やめた方がいいのでは?」
「まだ呑む」
肩を竦めた黒霧がボトルで酒をグラスに注ぐ。
これ以上飲んだら確実に明日は二日酔いで死んでるわ……まあいっか、USJ襲撃して死柄木も負傷して脳無も調整中ならさすがに何もないだろ。
既に顔が熱いけど、めっちゃ赤い気がするけど。
いいじゃん、嫌々ながら襲撃頑張ったしさっきしょーちゃんに会ってきたご褒美ってことでさ。
「……逮捕されたい」
「困ります。目的果たしてお役御免になってからにしてください」
「お前ら絶対道連れにするからな……」