大規模侵攻でのある活動

※もしも名前がアフトクラトルだったら
※父親が重役なのでそれなりに地位は高いため、様付けされてる
※自分が半近界民ということは知ってる
※トリオン量が多いのと半近界民ということで角はなし

何が起きたかわからなかった。
ねえ、ミラが持ってるのはエネドラの手?
なんで切り取るようなことしたの、なんでそんなことするの。
「泥の王」だけを回収して、エネドラの手が落ちる。
冷たい目は、ずっとずっと怖いと思っていたものだ。
だって、攻撃するときも誰かの命を絶つときも、なにも思ってないから。
敵意も殺意も悪意もなにもなく、人をころしてしまえるから。
どうして、そんなことができるんだ。

「名前様、行きましょう」

ミラのそんな言葉と同時にエネドラの背に刺さる複数の刃、私の頬に跳ねる赤。
なんで何も思ってないの、なんでそんなに簡単にエネドラに攻撃できるの、なんで、貼り付けたみたいに笑っているの。
──怖い
私も、同じことされる……?
回収しに来たのは黒トリガー、私は違う。
何より、玄界の血を引いてる半端な近界民だ。
ここは私からしたら異界、きっと近界民からしたら玄界は異界。
異界で何が起こるかわからない、命を落とすことだって。

「名前様」

「あ……」

まだ弱く息をしてるエネドラの背に手を置いて、ミラを見上げる。
玄界の兵士たちは何が起こっているのかわかっているのかいないのか、動かない。
ねえ、私も、ころされる?
だってミラは敵意も殺意も悪意もなく人をころせるんだ、今だって私にそんな感情向けてない。
何が起こるのか、わからない。

「い、かない……」

エネドラを置いて行けない、何よりミラが怖くて行けない。
ハイレインさんが、怖くて行けない。
私にできた意思表示は、エネドラの服を掴んだことだけだ。
ミラは笑みを引っ込めると珍しく眉に皺を寄せた。
何をハイレインさんに伝えたか知らないけれど小さく口が動くのだけが見えて、そして〝窓〟が閉じる。
いなく、なったらしい。
エネドラが憎々しげにハイレインさんの名前を呟いて、倒れた。
傷の位置も出血量も致命傷。
殺す気だったんだ、最初から。

「エネドラ……」

なんでだろう、何か込み上げてくる。
思うことはたくさんあるんだけど、でも、出てくるのは涙だけで。
敵地でこんなことしちゃだめなのに。
ポロポロと流れてくる涙を拭って顔を上げるとついさっきまでエネドラと戦ってた人と目があった。

「……戦う意志はありません」

というか、この短時間で頭がぐちゃぐちゃで何もしたくない。
トリガー起動させることは可能だけど、そんな気力もない。
自分のトリガーをその人に投げて、視線を落とす。
これから私はどうなるんだろ、とか。
何も思わなかった。

2023年7月28日