「日和様、彼女は……」
「……お食事持っていったのだけど、食べられないからって突き返されちゃいました」
日和様が困ったように眉を下げる。
あれから一週間、我々の傷も癒え、立役者の海賊も目を覚ました。
けれど、我々と彼女の間にできている壁や溝は厚く深い。
日和様は根気よく彼女のところに通っている。
彼女の部屋は城の正面とは反対側で、オロチが彼女を気遣ってそこを宛がったのだろう。
賑やかな場は苦手で、オロチの開く宴に時折現れてもすぐに部屋から出て休むことがあるくらいだ。
いや、もしかしたら、この国を見下ろしたくなくてそこの部屋になったのかもしれない。
目を覚ました彼女からは、オロチ程ではなくともこの国を、この国の人間をよく思っていないことは感じ取れた。
それがあの時の言葉だ。
オロチは全てを間違えた、だがそれはワノ国にも言えることだ。
血筋に罪があると決めつけて、迫害し、果てに命まで奪ってしまった正義感が自分で自分の首を絞めた。
それが、この二十年辛酸を舐めさせられた原因。
もしも、もしも、そんなことがなければ黒炭オロチも光月を支える大名として並んでいたのかもしれない。
今さらそう思っても、何もかもが遅いし、形はどうあれオロチからの悪政からは解放された。
それでもおれと日和様にはまだ凝りが残る。
黒炭の姓を持つオロチとカン十郎は死んだ、残る黒炭は彼女だけ。
国からは処刑しろとの声もある、同時にそこまでする必要があるのかと問う声もある。
良くも悪くも、何もしてこなかった彼女への国からの評価はこれだ。
日和様はもちろん、おれたちも彼女をどうこうする気は皆無。
彼女と向き合うことが、この国ができる過去への償いだ。
……彼女に、我々と言葉を交わす気があればの話だが。
日和様の付き添いで、部屋の外で待機しているが話すのは専ら日和様、彼女は何も言わない。
食事も一日一度口にすればいい方だ。
緩やかに死へ向かっているのでは、そう危惧しているのは全員。
「なんで食べないのかしら……目の前で私が毒見しているのに……」
「それだけじゃないのかもしれませんね。城でも彼女が宴で食べものを口にしたのはあまり見ませんでしたから」
「うーん……あの時は、オロチが彼女に何か話していて、それから口にしていたような……」
それはおれも覚えがある。
料理の名前は料理人が予め話していた。
その後にオロチが彼女に何か話して、それから口にする。
逆にオロチが話さないと、それまで彼女は口にしなかった。
……あ、もしかして。
「色ではありませんか?彼女は色が見えません。もしかしたら、オロチは料理の色を話していたのやも……」
「あ……!」
そう思えば納得がいく。
彼女は色が見えない、おれたちには彼女がどう見えているのかはわからないが、色がわからない食事は手が出しにくいのではないだろうか。
……そこまで彼女に気を遣っていたのか、オロチは。
日和様は意を決したように持っていた膳を見つめ、それから再び彼女の部屋へ踵を返す。
これはこの色、でも色の名前だけじゃわからないから……そう呟く姿に本当に彼女のことを気にしているのだなと感じた。
彼女と友人になりたい。
そう言っていた日があったことを、おれは知っている。
光月と黒炭が友人になれることもそうだが、それを抜きにしても日和様は彼女と友人になりたいのだと。
彼女の部屋へやって来ると、日和様は「失礼します!」と勢いよく足で襖を開いた。
……お転婆じゃなくて足癖が悪いだけでは……?
ぼんやりと窓の外を見ていた彼女は驚いたように目を丸くすると、重ね重ねなんですかと嫌味っぽく言う。
「やっぱりお食事食べましょう!量が多いのでしたら私も食べます!!」
「はあ……ならそのまま食べたらいいんじゃないんですか、私はいりませんので」
「白米とお魚とお味噌汁ですよ!ツヤツヤで白いお米!お魚は秋刀魚!青々とした鱗に下顎が黄色いからとても新鮮です!お味噌汁も緑が綺麗な青菜が入っていて美味しいから!食べましょう!!」
その説明で良いのか悪いのかわからないが、日和様の言葉に彼女は少し興味を持ったように日和様が置いた膳を見た。
おお、効果はあったようだ。
日和様は膳に乗せられていた箸を手に取って彼女に握らせる。
「これは青黒檀のお箸です。真っ黒だけどよく見ると木目が綺麗なんですよ」
「……そうですか」
ふと顔を上げた彼女と目が合った。
……とても目で語っている、お前のところの姫様をなんとかしろと。
無理です、無理。
言ったら聞きませんから。
不機嫌な顔を隠すことなく箸を手に料理に手をつける姿を見て、日和様が嬉しそうに破顔する。
少しずつでいいんだ。
分かり合えなくとも、歩み寄って、新しく関係を作っていければ。
そうすればこの国だってきっと変わる。
新しい将軍であるモモの助様だって、彼女のことは無下にしないだろう。
あーんしてあげますよと日和様が詰め寄れば、彼女は嫌そうに箸を死守して体を避ける。
そんな姿を見てそう思った、そう思っていた。
花の都は、いやワノ国は宴だってさ、ああそうですか。
城の反対側でも賑やかなのは伝わってくる。
惰性に身を任せて生きてんな、ここ数日は。
誘われたけれどお断りした、それは予想の範疇だったそうでお土産持ってきますからねと日和は出て行った。
別に閉じ込められているわけじゃない。
頭に血の昇った人間がいるかもしれないからと部屋の外には誰かしらいるけれど。
窓から空を見上げれば、漆黒の中に星だと思われる光が点在しているのが見えた。
たまに上がる花火の光に負けて消える。
ふと、懐に入れていた簪を取り出した。
日和は「その簪!誰にもらったんですか!!」って凄く聞いてきたけど、なんでも赤い菊の花言葉が関係しているらしい。
頑なに誰にもらったかは言わなかったけれど、赤い菊の花言葉を聞いた私の気持ちを誰か察してくれねェかな。
今でも信じられねーっつの。
生きてんのか死んでんのかわかんないけど、カイドウが敗れたってことはそういうことだろ。
死んだのかな。
死人が何を思っていたのかなんてわかんねーんだよ、遺った人間はさ。
おじ様だってそう、全部はわからない。
遺された人や物から感じ取るしかできない。
……いや、それでもわかるか、これに関しては。
簪を贈る意味だってわかってなさそうだしな、あの人。
はあ、と息を吐いて部屋に置かれているものを見渡す。
おじ様に与えられたまま、長屋からこっちに来る時の荷物も纏まったまま。
文机の上に置いていた、あの上質な筆を手に取っても描こうとは思わない。
……描くったって、何を。
墨では描けるだろうけどさ、色はもう塗れないよ。
私の世界は白黒のまま、色を教えてくれる人なんて……いや、日和だったらあれこれ世話焼いてくれているから教えてくれるんだろうけど。
でもそうじゃないんだよ、押し付けるようなものは欲しいものじゃないんだよ。
おじ様から教えてもらいたかった。
今までも、これからも。
叶わないけれど。
……そこにあの人がいれば、面倒にしながらも呆れながらも教えてくれたんだけどさ。
「……ただ、赤って言われただけじゃ、どんな赤かわからないよ」
血のような赤なのか、炎のような赤なのか。
赤だっていろんな種類があるんだよ、誰に聞けばいいの、誰が私に教えてくれるの。
簪と筆を見比べて、一度筆を置いてから簪で下ろしたままの髪を纏める。
しゃらしゃらと飾りが擦れる音、綺麗。
ヘアピンとかあったらよかったな、ほら、横髪をヘアピンで留めてからその隙間に簪差し込むやり方もあるじゃん。
あれなら髪切っても簪使えるよね。
筆は先が完全に乾いているのを確認して桐の箱に入れ、それを懐に入れた。
いつ描こうって思うかわからないけれど、自分にできることや好きなことは身近に持っておきたい。
まあ、もう私なんかの絵なんて誰も見向きもしないと思うけどさ、義務感があって始めたわけじゃない、初めておじ様に言ったわがままがこんなところまで続くなんて思わなかったな。
色は見えなくても、絵は描ける。
でも、何を描こうと思えるようになるだろうか。
本当に白黒だけの世界になってしまって、もう彩られることはないのだなと思うと喪失感が酷い。
おじ様が死んだからって、死のうかなって思っているわけじゃない。
一瞬それもありかなって思ったけど、おじ様は怒るでしょ。
……まあ、なんかこのまま流されていたら美談にされそうでそれはそれで腹が立つ。
黒炭としてじゃなくて、めちゃくちゃ個人的に。
姪に当たる私がおじ様の被害者みたいな空気を感じるから腹が立つ、ええ、どっちかって言ったら短気ですとも。
短気は損気ってな、でもほら、素直だから。
今まではそりゃあ流されてましたよ、それはおじ様だからね。
でも日和を始めとする光月に流されるかと言われたら別よ別。
どうしたもんか、せめて、長屋……とは言わない、今なら元鬼ヶ島でもいい、静かに過ごさせてくれ。
なんなら、可能ならワノ国の外に追放でもいいよ。
と、思って窓枠に寄りかかるとばさりと何かが羽ばたくような音が聞こえた。
変なの、鳥って夜は基本的に動かないのに。
「おい、妙な気は起こしてねェだろうな」
「……は?」
聞こえてきた声に顔を上げる。
いや、いやいやいやいや。
な、んで?
その人にとっては小さな窓を覗き込むような体勢で、見知らぬ美丈夫がこっちを見下ろしていた。
いやー、知り合いじゃないような……でも待って、そこまで鈍感じゃねーから。
初見ででっかと零したように、背も体格も、炎が揺らめく背中の翼も大きくて。
ねェ、いつも趣味悪いマスクしてませんでしたっけ?
なんで、どうして。
てっきり死んだのかと。
そりゃ、素顔は初めて見たけれど、そうでなくても属性オンパレードなこの人を間違えるわけないじゃん。
私が大きく目を見開くとその人は怪我とかねェな、と私を見て息を吐く。
「キング様……?」
「ああ」
「なんでここに、というか死んだのかと……」
「勝手に殺すな、種族柄丈夫なんだよ」
上の階の屋根に手をかけて、まるでどこのヤンキーだと思うようにキングは身を屈めた。
どんな種族だ、人間じゃねェんか。
あー、でも、翼生えて炎も常にあって人間じゃねェか。
丈夫と言ってはいるけれど、ボロボロだし、頭や体の包帯は痛々しいし、よく見れば片方の翼は切られたのか半分くらいになっている。
「なんで……」
「さっきからそればかりだな、忘れたわけじゃねェだろ」
欲しいもんを奪うのが海賊だって。
都合のいい夢でも見てんのかな。
キングは手を伸ばして私の頬を指の背で撫でるように触れた。
何度かこうされたな、そういえば。
どんな顔しているんだろう、私。
だって、この人はあの日、カイドウに首を斬り落とされたおじ様に駆け寄るのを止めたし、その前に薬盛っていたし、閉じ込めたし。
最後の最後に裏切られたと感じるくらい、私が浮かれていたと現実を突きつけたのに。
なんで、こうしてまた会えて、私は嬉しいと思ってしまうのだろう。
「……お前の一番はもういねェだろ」
「……」
「おれも、おれの一番だったカイドウさんはいねェ」
知ってるよ、どっちも知ってる。
「心残りなんてねェだろ。前に言ったように、お前を奪いに来た。拒否権なんざねェからな」
「は……?」
「おれと、ワノ国の外に行こう」
何言ってんだこの人。
ぽかんと口を開くと、キングは間抜け面、と笑い、私を大きな腕で抱き上げた。
……は!?
それからキングは部屋の中を見渡すと、まだ纏まったままの私の荷物を手にする。
いや、いやいやいやいや。
何だって?
持ってろよと、その荷物を私に抱えさせ、それから屋根に足をかけた。
……で、デジャヴ……!!
あの時よりは高くないけど!飛ぶのが怖いなら跳ぶか、はもういいんだってば!!
「あ、前より減速できないからな」
「ばっっっかじゃねェの!?」
さては無計画だなこの人!
思わず声を荒げてしまった。
その声に気づいたのか、部屋の外から私を呼ぶ声がする。
やっべ、外に人いたんだわ。
荒々しく襖が開かれ、そっちへキングと揃って視線を向けた。
殺すか、とキングから不穏な言葉が聞こえたからそれはやばい、絶対騒ぎになるのにここでさらに騒ぎにしないでくれと言えば冗談だと私の頭を撫でる。
物騒な冗談だな!笑えねーよ!!
カイドウの残党だ!黒炭の姫様が!とその人が叫ぶのを後ろにキングが跳んだ。
もう一度言う、なんなら何度でも言う、跳んだんだわ、飛んだんじゃなくて、跳んだんだわ。
ほんとこの人はよォー!!
前回学んだのでお口はチャック、無理無理叫ぶ余裕なんてねェから。
前のようにキングは翼を広げて勢いを殺すけれど、確かに前より勢いは落ちないまま城の敷地に無事に着地した。
……こ、こっわ。
ドッドッ、と心臓がめちゃくちゃ高鳴る。
これね、ドキドキしたのよ、トキメキなんて可愛もんじゃない方ね。
それからキングは荷物を抱えている私の体を上に少し投げると、そのまま姿をプテラノドンに変え、私を背に乗せて飛んだ。
今度は飛ぶんかい。
わかってますよ炎には触れずにしがみつきますよ難易度たけーな!
前よりスピードが落ちてるだけいいのか……いやいいわけないじゃん!
「クイーンのカスと合流する予定だったが止めた。海軍が襲撃してきている」
「かいぐん」
「外で海賊を取り締まる組織だ。おれたちの敵だな」
あ、やっぱりあるんだねそういう組織。
話す余裕があるだけいいのかな……複雑。
でもそれってクイーンだっけ?は助けなくていいの?
私の言いたいことを察したのか、あいつも大看板だったんだから自分でなんとかするだろ多分、となんとも適当な答えが返ってきた。
あと思ったんだけど、マスクないだけで本当に印象変わるなこの人。
顔晒せないってカイドウが言っていたような……まあ、もういっか。
飛んでいく方向はどっちだこれ。
「どこ行くんですか」
「鬼ヶ島があった方向だ。船がある……多分」
……ほんっと無計画で来たなこの人。
飛びながらキングはまず船があるはずのところへ向かい、そこで一時休息をしてからまた飛んでワノ国の外から潜港に入り、船で外に出る予定なのだと説明をする。
無計画って言ってごめんな……いや、最初の船があるかわからない時点で無計画って思うわ普通。
しばらくキングが飛んで海の上に出ると、少し進んだ先に船が何隻かあった。
百獣海賊団の旗が掲げられているから多分あれが目的の船だろう。
そこへ下りて、私が甲板に足をつけたのを確認するとキングは姿をプテラノドンから元に戻る。
思ったよりもまだしんどいな、とキングが口にして座った。
つーか船でっか……
あと、鬼ヶ島があったところだからか寒い。
くしゅんとくしゃみをすると、キングは私に腕を伸ばし、そのまま抱き寄せる。
……あったかい。
人肌もあるだろうけど、キングはいつも背中から炎出てるし、それもあるかな。
「重ね重ね聞くが、妙な気は起こしてなかっただろうな?」
「妙な気て……」
「死のうとか思ってねェよなって確認だ」
「……してませんよ」
……即答はできないんですけどね、してませんとも。
思っただけでそんな意気地はないんで。
上からの視線が痛いけどスルーしとこ。
「……正直」
「あ?」
「また、会えるとは思っていませんでした……」
「……そうだな」
「あと、あの、簪の話、聞こうとは思ってたんですけど」
「ん」
「……簪を贈る意味なんか知らないですよね?」
頼むからそうだと言ってくれ、マジで。
赤い菊の花言葉はこの際置いておくとして、まずはそこからだ。
ちらりとキングを見上げれば、目を丸くしていた。
マスクねェだけで意外とこの人表情豊かなんじゃね?知らんけど。
キングはお前はそういうやつだったよと頭を抱えると私の髪を纏めている簪に触れてそれを揺らす。
「何年ここにいたと思ってんだ、知ってるよ。男が女に簪を贈る意味くらい」
「……はい?」
「そういうお前は、その花の花言葉は知ってんのか?」
つまり、そういうことだ。
そういうこと……そういうこと……!?
ぼんっ、と顔が熱を持つ、爆発したのかと思った。
その様子なら知ってるなとキングは思ったよりも穏やかに表情を緩め、私を抱き上げると頬を寄せる。
わー、美丈夫ー。
……頼むから現実逃避くらいさせてくれ、マジで、マジで!!
こんなストレートな、ストレートなことある!?
耐性ないんですゥ……前世も含めて耐性ないんです……
「おれは海賊で海軍から追われるし、露見すれば種族柄世界政府からも追われる身だ。それでも、お前ひとりくらい守りながら生きることはできる」
「ひえ……」
「お前だって、ワノ国の人間ってだけで海軍や世界政府に追われるだろうから立場は一緒だ」
「待ってそれ初耳」
「だろうな」
恐ろしいな鎖国国家。
うっわマジか、ワノ国の人間ってだけで?
マジこっわ、この国どころか世界こっわ。
今の私に身を寄せられる場所ねェじゃん。
……でも、それはキングもか。
まあ、いっか。
同じ追われる身なら、こうして誰かとなら、そこまでは怖くないから、多分、おそらく、きっと。
どうせワノ国にいても、お綺麗な美談にされる、それは腹が立つ。
だったら、一度でも、国の外に行ってみたいと思ったんだから、何があっても後悔はしない。
ねえおじ様、だから私の手を離して笑ったんだと思ってもいいかな?
夢の中で、私の都合のいい夢だったとしても、おじ様はそうしてくれるよね?
「……末永く、よろしくお願いします」
「……あと悪いんだがな」
「はい」
「あー……お前の名前を、ちゃんと聞いてなかったから、もう一度名乗ってもらってもいいか?」
そういえばそうでしたね。
この人何がなんだかって飲み込めない様子だったわ。
ふふ、と笑えばキングが悪かったよとバツが悪そうにする。
色の見えない私には、凄く皮肉で嫌いな名前だけど、この人に呼ばれるならいいかな。
「姓は黒炭。名は、彩る葉と書いて、イロハ」
「……いい名前だな」
そう言ってくれたのは、ふたりかな。
目の前の人と、おじ様の。
おじ様のいない世界は白黒だったけど、この人がまた彩ってくれそうだ。
穏やかな最期はきっと約束されないけれど、その途中で後悔しなければ、穏やかだと言い切れるような気がする。
ところで早速、キング様の髪の色は何色ですかと聞けばお前と同じ、と答えてくれた。
ほら、この人が彩ってくれるもの。
まだわからない、知らない色ばかりの世界に飛び込むのは怖いけど、キングとなら大丈夫だよ。
黒炭の女の子
なんちゃって転生者。
惰性に身を任せていた、どうしよっかなーって考えてはいたけど。
食事に関しては日和と傳ジローの予想通り。
宴の日に自分の部屋でぼーっとしていたら死んだと思っていたキングに攫われた。
大丈夫、大丈夫だよ、おじ様が手を離して笑ってくれたから。
この後無事にワノ国から出て行く。
キングとちょっと船旅してから政府非加盟国にでも揃って身を隠すんじゃないかな。
まさか簪を贈る意味も、花言葉もわかっていたなんて……これなんてプロポーズ!?
名前は黒炭イロハ、彩る葉と書いて、漢字では彩葉。
キング
ちゃんと以前話した通り、欲しいもんを奪いに来た。
クイーンと合流予定だったけど、大将が来たのでそのまま逃げるように飛び去る。
まああいつも大看板だったんだから問題ねェだろ、多分。
女の子を攫いに来た時、思い詰めたような表情にも見えたから妙な気を起こしていないか焦った。
でもそんなことはなかったので安心。
簪を贈る意味も知っているし、花言葉だってわかってそれを選んだんだ、皆まで言わせんなプロポーズだぞ。
この後無事にワノ国から出て行く。
間もなく本名を教えるし、女の子にも言葉遣いを素にさせるんじゃないかな。
お互いの一番がいなくなって、繰り上がりでお互いが一番でいいじゃねェか。
多分、カイドウはやりやがったよあいつとなんとも言えない顔してます。
光月日和
女の子と友人になりたかった。
宴でのお土産をたくさん持っていったのに、攫われたのだと聞いて一番ショックを受ける。
でも、ほんの数日でも、一緒に過ごせてよかったと思う。
本当に、友人になりたかった。
傳ジロー
日和と女の子をある意味一番近くで見守ってきた。
ゆっくりでも歩み寄って日和と女の子が友人になれると、そう思っていた。
いたのに、女の子がいなくなってショックではあるが納得もしている。
最後まで、彼女は心から許せなかったんだろうな。
だから、無抵抗に攫われたのだ。