同期の妹で、今受け持っているクラスにいる生徒の姉で、受け持っていた教え子が突然学校に顔を出した。
ややこしいだろうが、そういうやつだ。
三姉妹の真ん中というのは建前で、従姉妹と育った女の子。
似てるからか、姉妹と言われても違和感はない。
それに、こいつ個人のややこしく重い事情故に、雄英へ訪れることは二度とないだろうと思っていた。
なのに、なぜ来たのか。
そんな諦めにも似たような、似合わない表情で。

「せんせーが妹の担任でしょ。そういう連絡はしてるよ」

それ今度の授業の?と手にしていたプリントを見て名字名前が言う。
USJで救助訓練をやると伝えると、懐かしそうに目を細めてそのプリントを覗きに来た。
痩せた、というより窶れた、と思う。
こいつの個性の都合上、体は鍛えておいた方がいい。
だから、と高校時代はかなり鍛えていた。
なのに今はどうだ。

「……」

さっきの何か言いたそうにしていたのも気になる。
それを問い詰めようか。
そう思ってプリントをデスクに置き、名前の顔を真っ直ぐと見つめた。
幼かった名前を知っているからこそ、妙な違和感があるのだろうか。
さっさと聞けばいい、何を言いたかったのか。
しかし、思うように言葉が出ない。
時間の無駄だというのに。
なんでそんな顔してるのか、何があったのか、何が起こってるのか。
問い詰めようと決めた時、校内にけたたましい警報が鳴り響いた。
セキュリティ3が突破されたというアナウンスも流れる。

「名前、用事が残ってるならここで大人しくしてろ。終わったならこの騒ぎが収まったら帰れ。いいな?」

「わかったよ、せんせー」

素直に返事をした名前に少し違和感を感じた。
あんなに素直なやつだったか?
時間の流れで丸くなった?あいつが?
戻ってきたらいろいろと聞こう。
そう決めて、マイクや他の教師陣と職員室を出た。

「ごめんねしょーちゃん」

2023年7月28日