心機一転したらどうですか?なんて言ったトガといいわねそれ!なんて同意したマグネによってふたり曰くイメチェンをさせられた。
イメチェンと言ってもただ服をコーディネートされただけだ。
いつもパーカーだったからいっその事変えましょう!とトガとマグネがあれやこれやと服を持ち合わせて、ふたりがしっくり来たという格好をしている。
何が悲しくてチューブトップブラにポンチョを着る格好になったのか。
最初から最後まで私は真顔。
トガ曰くセクシーにいきましょう!
マグネ曰くチラ見せをしましょう!
アホか。
なんでこんなアホ共の意見を突っぱねなかったんだアホか私。
「あとこれ、弔くんがつけさせろって」
「なにこれ」
「GPSです。だって名前ちゃん、隙あらば逃げようとするでしょう?」
「……逃げないよ」
行く場所ないのにどこに行くの。
トガが私の首に赤いチョーカーを巻いた。
チャリチャリと飾りが音を立てる。
なんだろうと思って触ると、小さな南京錠みたいなものだった。
あからさまではないにしろ、いい気はしないな。
似合う似合う!とぴょんぴょんしながらはしゃぐトガに思わず溜め息が零れる。
「あとこれは私から個人的によ」
かしゃん、軽い音を立てて左手首に何かをつけられた。
視線を向けると金属製のちょっとゴツめのブレスレットが。
なんだなんだ。
個人的にってどういうこと。
まさか今度は盗聴器だとかそういうのじゃないでしょう。
ちょっと重いそれを観察していると、マグネが苦笑して私の頭に手を置いた。
「プレゼントよ。普通のブレスレット。そんな怪しまなくても何もないわ」
「なんで……」
「ねえ名前ちゃん、ここは私たちの居場所よ。あなたも、前いたところに戻れないのならここを居場所になさいな」
「……」
「もちろん、あなたの過去をわかって言ってるわ。苦しんだのなら──楽になっていいのよ」
楽になったって誰も責めやしないわよ。
マグネの言葉がストンと落ちる。
どんだけ自分は苦しんでいたんだろう。
年数にしたら、約2年と少し。
父親が敵だから。
従姉はヒーローだから。
私がヒーローを目指していたから。
敵連合に連れてこられた直後ならこんな言葉に安心なんてしなかった。
決め手は、伸ばした手にヒーローは誰も応えてくれなかったからだろう。
俯く私の後ろからトガが首に腕を回して密着する。
「私は連合がとても気持ちいいです。苦しくなんかないし、辛くなんかない。ねえ名前ちゃん、なんでそんなに苦しみ続けるの?楽になりたくないの?」
なんで?
そんなの私が知りたい。
なんで私はずっと苦しいままなの?
なんで私はずっとつらいままなの?
なんで私はこんなに生きづらいの?
なんで私はずっと楽になれないの?
サッと心臓が冷える、よく知ってる感覚が私を襲う。
「……女同士、その方が話しやすいと思うわ。吐き出したいなら吐き出しなさい、もうこちら側の人間なら、受け止めるくらいしてあげる」
「可哀想、あんなに助けてって言ってたのに、ヒーローは気づいてくれないなんて」
やめて。
真綿で首を絞めるような、変な優しさを私に与えないで。
「……っ……楽に、なりたい……!」
それに縋るしかなくなってしまうから。