名前の家に遊びに行ったらなんかいた。
いや、あの、名前なんだけどね?
とてももこもこ。
すごくもこもこ。
限りなくもこもこ。
過ぎたけれどハロウィンの仮装かな、もこもこのシーツお化けでもやっているのだろうか。
どうしたのそんなかっこして、と訊けばなんとも言えない顔の名前が「さむいの……」と答える。
なんでも寒さが苦手らしい、言われてみれば冬にバーで会った時はマフラーと手袋とニット帽を身に着けていたような……
部屋の中はそこまで冷えているとは思わないけれど、でも冷たい空気なのは間違いない。
エアコンで部屋の中暖めればいいのに、と思ったけれど名前の視線の先には彼女が飼っているレオパードゲッコーとウーパールーパーが。
爬虫類と両生類、もしかしたら温度管理が関わっているのだろうか。
「私が寒がりだからって部屋の中を暖め過ぎちゃうと、レオパちゃんとウーパーちゃんも体調崩しちゃうから」
なるほど、飼い主の鏡。
俺は彼女ほど詳しくはないけれど、管理も大変なんだろうな。
たまにヒーターが、クーラーが、と頭を悩ませているのを見たことがある程度だけど。
寝室はちゃんと温かくしているらしい、電気毛布で布団を温めているとか。
……まだ冬になってないけどこの子大丈夫かな?
もこもこの名前がマグカップにコーヒーを淹れてソファーに座る俺に手渡した。
俺の隣に腰を下ろした名前が両手で持ったマグカップにふうふうと息をかける。
かわいい。
もこもこで羊みたいだし、寒くて熱いコーヒー淹れたのにふーふーしてる、かわいい。
というかその着ているやつは着る毛布ってやつ?
あちち、と苦戦しながらコーヒーを飲む名前がローテーブルの上に置いてあったリモコンを取って俺に渡した。
「吏来、なにか観たいものある?」
「なにが観れるの?」
「サブスクで大体は観れるよ」
「じゃあ映画とかどう?」
「吏来が選んで」
あと寒いからくっついて、そう言う名前がかわいすぎてどうしよう。
変な声が喉から出そうになったのを飲み込んで名前に身を寄せればふかふかとした感触がした。
思ったより柔らかいかも。
適当に少し前に流行った映画を選んでそれを再生する。
名前はどうしても俺で暖を取りたいのか、ぎゅむぎゅむとさらにくっつこうとしていた。
……これ、とってもレアなのでは!?いや、事務所のレアじゃなくてね?
いつもは名前からこうして距離を縮めることないから新鮮だ。
腕回してもいいかな……?
ちょっとドキドキしながらそっと名前に腕を回してみる。
「さむさむ……」
は?かわいい。
まったく恥ずかしがらずに俺の腕の中に納まってくれているんだけど。
え、かわいい。
半分くらい飲み干したマグカップを両手で持つ姿がかわいい。
寒さからか体育座りのように足も折りたたんで爪先をもぞもぞしているのもかわいい。
小さい羊を抱いているみたい、抱っこしたら怒られるかな。
「名前、抱っこしたらもっとあったかいと思うよ」
「じゃあ抱っこ」
名前の前じゃなかったら踊り出すくらい舞い上がるよ!?
だっこ、だっこって言った!
名前の手からマグカップを預かってそれをローテーブルに置く。
どうぞ、と腕を広げれば本当に珍しく躊躇いなく名前は俺の膝の上に乗った。
……冬って、寒い時期って最高なんだなあ。
抱っこというよりはバックハグの体勢だ。
後ろから名前のお腹に腕を回し、肩に顎を乗せる。
俺も名前で暖を取れるし名前も俺で暖を取れるからいいよね。
どちらかというと名前は体温低いから、だから冬は余計に寒く感じるんだろうな。
「吏来、苦しい」
「ごめんごめん、でも温かいでしょ?」
「うん、温かいの好きだから」
あーかわいい。
ほんと寒い時期っていいね……?
これで温かい時期になったら嫌がられるんだろうな……だったらずっと寒くてもいいかぁ。
なんて思いながら名前にぴったりとくっつきながら一緒に視線をテレビに向けた。
