聖夜の予約を忘れずに

「え?その日は仕事あるからちょっと無理かな……」

その言葉に少なからずショックを受けたのは事実で。
そっかぁ……と肩を落としたのも今では懐かしい。
名前と付き合う前に名前をクリスマスに出かけないか誘ったことがある。
彼女に恋人はいなかったし、俺も付き合っている人はいなかった。
一縷の望みをかけて誘ったけど冒頭の言葉だ。
そっかぁ……と二度繰り返したけれど、ウイスキーを飲んでいる名前には届かないと思う。
カウンターの向こうのマスターも何とも言えないしょっぱい顔をしていた。
それが名前と出会って最初のクリスマス前の話。
意外とクリスマスに挙式をしたい夫婦はいるらしくて、今回彼女が担当している夫婦はそうだったんだとか。
しょんぼり、が俺にピッタリな言葉で、その年のクリスマスはうちに樹帆と恭耶を呼んでプチクリスマスパーティーになった。
ならばその次の年こそ、と思ったけれど、その次の年はまあ、あの、そのですね?
恋人ができていたんですよ、俺に。

「今年は恋人さんと過ごすんでしょ?イルミネーション綺麗だから見に行ってくればいいんじゃない?」

うん、そうなんだけどね。
確かにその年のクリスマスはとても充実していた。
当時の恋人とはまだ付き合って日も浅くて、でもせっかくだからクリスマスは一緒に過ごしたいねって約束していたから。
ちなみに名前はその年は休みを取れたからひとりでのんびり過ごしていたんだって。
後から聞いたけれど、名前の職場では交代でクリスマスの時期は休みになるらしく、彼女は休みを勝ち取れたんだとか。
……せめて一年、それが早ければもっと早く名前と付き合えていたのかな。
当時付き合っていた恋人とは年明けに別れちゃったんだけどね。
さらにその次の年、なんと名前が俺を誘ってくれた。
恋人もいなかったし、今年は休み取れそうなんだけどどうかな?って首を傾げていた名前。
嬉しかった、嬉しかったんだけど。
残念ながらAporiaの仕事がどうしても外せなくて、後ろ髪を引かれる思いで断ったのだ。
そっか……といつかの俺みたいに落ち込んだ彼女は可愛かったけれど、そんな顔はさせたくなかったんだよな……
とまあ、名前と知り合ってからはすれ違ってばかりのクリスマスだったけれど、無事に名前と付き合ってからの今回のクリスマスは約束を取り付けることができた。
ガッツポーズしたのは見逃してほしい。
LIMEの返信にAporiaで小躍りしそうになった俺を樹帆と恭耶が生温かい目で見ていた。

「よかったね」

「あ、わかる?」

「吏来さんいつもよりわかりやすく顔に出ていますよ」

樹帆と恭耶の指摘に思わず顔に触れる。
だって、三年越しだぞ?
やっと誘えて嬉しくなるのは当たり前じゃないか。

「名前も今年はどうしても休みが欲しいって職場で勝ち取ってきたからさ、せっかくならクリスマスマーケットに行こうかな」

「……休みを勝ち取るウエディングプランナー」

「字面だけだと凄いですね」

なんだかんだ愛されてる自覚はあるよ、クリスマスはクリスマスで名前にとっては繁忙期に近いだろうから。
クリスマスまではまだひと月ある、その間に名前とどこに行ってどんな思い出を作ろうか考えてみようかな。

2025年11月18日