バレないと思ったら見事にバレてふみふみされた灰谷兄弟+‪α

「言い訳なんて聞かねえからな現状が証拠だクソガキ共」

「ごめんなさい」

「すみません」

「重いッス……」

「せめて体格差考えてくれませんか……」

「オマエら馬鹿だなー、オレは止めたよおねえさん」

「黒川、止めたんならその手に持った缶チューハイは何?オマエもここに混ざりてえの?」

「やべっ」

「すみません、せめて一番下が斑目なの勘弁してやってください、白目剥いてます」

「鶴蝶、私が重いって言いてえの?」

「チガイマスゴメンナサイ」

今日はいい天気だなぁ、明日の朝まで土砂降りだって。
片足だけクソガキ共でできた山に乗せていたけど乗っかるように両足を揃えれば下の方にいる蘭からカエルが潰れたような声が上がった。
別にいいんだよ、今日は一晩中絵を描く予定だったから。
別にいいんだよ、いつもよりちょっと賑やかにしたいってのは。
そりゃあオールしたい時もあるでしょうよ、若いうちは。
ただそこにこっそり酒を持ってくるなんて何考えてんだオマエらは自分の年齢大きく声に出して言ってみろ。
どんなに体格よくても顔立ちが大人っぽくても悪いことしていても未成年だろうが締め上げんぞ。
水入れを洗いに行くついでにコーヒーでも用意するかと思ってリビングに顔出したら蘭と竜胆、望月、斑目、武藤が缶チューハイを持って顔を赤くしていたから問答無用で積み上げて踏みつけた。
積んだ順番は下から斑目、蘭、望月、武藤、竜胆だ。
私が見ている前で缶チューハイ持ってなかった黒川と鶴蝶は今のところ免除、顔赤くないし、ただ黒川は缶チューハイ目の前で持ったから考える。
おっかしいなぁ、前に竜胆は煙草吸ってんの私にバレて痛い目を見たはずなんだが?え、何?覚えていない?ここでジャンプすんぞ。
よかったなここ室内で、外だったら履きなれないヒールで飛び跳ねてやるところだっつの。
……いや、私も足挫く可能性あったな、やめとこ。
ふみふみとその場で足踏みをすれば山になっている五人のうち四人が声を上げた。

「ねえちゃん!出る!なんか内臓っぽいの
出る!!」

「痛い痛い痛い痛い!ねーちゃん微妙に爪先立ちしないで!!」

「吐く!吐くんでやめてください!!」

「オレ吐く……!」

「私には猫がふみふみする気持ちわからねえなあ」

「モッチー耐えろ!!ぜってー吐くなよ!灰谷と斑目の被害がやべえ!」

「おねえさんマジでこいつらやべえからそろそろやめて……やめてあげてください……」

黒川と鶴蝶も少し顔を青くさせて四人を応援したり私に声をかける。
猫のふみふみはなんだっけ、甘えたいんだっけ、ねえな、私は。
最後に少し爪先に体重をかければ主に竜胆から悲鳴が上がった。
それから五人の上から下りれば、順番に五人は山から逃げ出していく。
五人じゃねえな、四人だわ、斑目は伸びてるし。
望月はバタバタとトイレに駆け込んだ。
武藤は鶴蝶と一緒に斑目に声かけている。
蘭と竜胆は突っ立ったままの私の足にしがみついて涙声で謝っていた、なんだこの酷い状況は。
黒川は面白そうにこの状況を眺めているけどまだ缶チューハイを持っているからそれを睨めば、さっとテーブルの上に置いて何事もなかったかのように視線を逸らす。
蘭と竜胆に関してはこいつら酔ってるな、ってのがわかるんだけど。
顔真っ赤だし普段そこまで体使ってこないじゃん、私の足にひとり一本のようにくっつくな重い暑苦しい。

「ほらさっさと片付けろー、お酒は冷蔵庫に入れて、次飲んだら揃ってベランダから吊るすぞ」

「ねえちゃああああん」

「ねーちゃん……」

「……おねえさん重くねえの?」

「頼めるならこのふたり部屋にぶち込んでほしいんだけど」

黒川に声をかければ黒川はふたりの首根っこを掴んだ。
でもふたりは私の足にしがみついたまま。
そのうち黒川がムキになって思い切りふたりを引っ張る。
なあ、そのふたりがしがみついてんの私の足なんだけど、痛いんだけど。
鶴蝶がそれに気づいてふたりを引き剥がすために私の体を押さえ付けた。

「いだだだだだだ」

「やだ!ねーちゃんと一緒にいるぅぅぅ!!」

「ぜってー離さねえかんな!!ねえちゃん離さねえから!」

くっつき虫より酷いんだけど?
黒川が割りと本気でふたりを引き剥がそうとすればするほど私の体が浮く。
何この状態。
黒川と鶴蝶の力の強さもだけど蘭と竜胆の力もやべえ、私これ足もげんじゃね?
それにしてもひでえ酔い方、オマエら成人しても私の近くで飲むな。
しばらくそのままの状態でいると斑目を部屋に連れてった武藤とトイレに駆け込んでいった望月が戻ってきた。

「オレらも加勢します?」

「灰谷のねえちゃん足千切れんかもしねえっすけど」

「B級スプラッタ映画かよ、やだよそんなん」

「おねえさん諦めたら?鶴蝶、そのままおねえさん持ち上げてて、ムーチョとモッチーはオレと灰谷兄弟持ち上げて、もうおねえさんの部屋にぶち込む」

「じゃあ灰谷のねえさんオレが支えてるんで、諦めてください」

「シュールな光景過ぎて笑えねえ」

つーか待て、私作業中。
黒川の宣言通り、鶴蝶は私を、黒川と武藤と望月でふたりを私の部屋に運んだ。
片付けはやるからふたりをよろしく、なんて黒川に不本意だけど頷く。
……さすがに酒飲まないだろ、飲んだらマジで吊るすからな。
作業途中の絵を見て、まあふたりくっつけたままでもできるかと溜め息を吐いた。
今回は畳に座って描くスタイルだからそこまで邪魔にならないと思う。
私がローテーブルに向かえば蘭と竜胆はぴったりとくっついた。
ちなみに水入れは鶴蝶が新しい水を入れて持ってきてくれたので、特に作業には困らない。
一番年下の鶴蝶の方が気遣いできるってどういうこと……?いいのか天竺それで。

「ねえちゃん何描いてんの?」

「空と花」

「あ、この前オレと買った絵の具だ」

絵を確認すれば重ね塗りしたかったところはさっきの騒動の間に乾いている。
絵具のチューブからパレットに色を取り出して、筆の水を調整して塗っていけば両隣のふたりから感嘆の声が上がった。
そういやあまり描いてるところ見てないもんな、珍しいっちゃ珍しいか。
スケッチブックに落書きしているのは見たことあるかもしれないけれどこうして色を乗せるのは見たことないかも。

「これ蘭と竜胆じゃん」

「あとねーちゃんの色だ」

「よく見てんね」

売り物じゃないし、たまには思うままに描いてみようと思っただけだ。
リビングに飾りてえな、玄関でもいいかも、そう嬉しそうに話すふたりの声を聞きながら塗り進めてれば部屋のドアがノックされる。

「灰谷のねえさん、片付け終わったからオレら寝ます」

「ん。私はまだやってるから何かあったら来ていいからね」

「はい、おやすみなさい」

……本当に鶴蝶気遣いできるな、少しは蘭と竜胆も見習え。
しばらく無心に進めていると、隣の蘭と竜胆からかけられる重さが増した。
交互に見ればすっかり寝息を立てて眠っている。
時間を確認すればもうかなり遅い時間だった。
仕上げは明日にしよう、私も寝る。
ふたりは……運ぶのめんどくせえな、私の布団に寝かせよう。
蘭と竜胆を順番に布団に寝かせ、毛布をかけてやる。

「……おやすみ」

少し乱れた髪を撫でれば、少し緩んだ寝顔を見せた。


親戚のおねえさん
未成年が生意気に飲酒してんじゃねーよと灰谷兄弟と天竺メンバーを積み上げて踏みつけた。
ちなみに竜胆くんが煙草吸ってんのに気づいた時はノーモーションでボディーブローキメた。
最近弟分増えてね……?もう三十路前だから相手にする体力ねえよ?
今さらだけどお名前は花に因んだ名前だったりする。

灰谷兄弟
天竺メンバーとこっそり飲酒したら天竺メンバーと積まれて踏みつけられた、蘭くんは下から二番目でかなり重かったし竜胆くんは一番上だったけど爪先立ちされて痛かった。
酔ったように見せかけて多分お酒に強い、酔ったと見せかけておねえさんにしがみついた、顔は赤かったけど。
剥がされそうになったけど粘ったらおねえさんの部屋に運んでもらってラッキー。
おねえさんの絵に花とはいえ自分たちが描かれていて嬉しい、ついでに一緒に寝れてめちゃくちゃ嬉しい。

天竺メンバー
灰谷家に遊びに来たのは前回と同じメンバー、鶴蝶くん以外飲酒してたら積まれて踏みつけられた、イザナくんは上手なので回避したけど積まれる直前だった。
イザナくんはおねえさん、他のメンバーは灰谷のねえさん、灰谷のねえちゃんと呼んでいる。
そのうち姐さん、姐ちゃんと呼ぶ日が来る。
灰谷家めちゃくちゃ居心地いいからこの固定メンバーで頻繁に遊びに来るのが増えるし、怒られる日もあれば怒られない日もあるかも。

2023年7月28日