お酒解禁して調子に乗ったら引きずられた灰谷兄弟+‪α

「いだだだだだだだ!!ねえちゃん摩擦!摩擦やばい!!」

「待って待ってねーちゃんケツで雑巾がけしてるこれ!!」

「夜に雑巾がけしなくていいくらい綺麗に掃除してんだろ私が」

「いつもありがとうございます!!」

「でもそうじゃない!削れる!!」

「削れろそんなケツ」

今日はいい天気だなぁ、台風一過でちょっと暑いけど。
成人したから酒飲んでくる!と意気揚々と蘭と竜胆が出かけていた。
まあ止める理由なんてねえしな、いってらっしゃいと見送って私は作業をしていたのが夕方からさっきにかけて。
飲みメンバーは蘭と竜胆の他に望月と斑目に寺野、飲めないけれどその場に呼ばれたのは鶴蝶だ。
まあそれはいいよ、ちゃんと節度守って飲んでりゃ。
ふたりがいないから私ひとりで夕飯だな、とちょっと贅沢してご飯食べに出かけた。
デザートのアイスを食べていると鶴蝶から電話、なんでも鶴蝶と寺野以外酷く酔い潰れてしまったんだって。
まあそれはいいよ、寺野は知らねえけど他の四人は飲むのあまりなかっただろうし、飲むつもりが酒に飲まれたんだろうし。
どうやらうちの近くで飲んでいたらしくてそのままうちに泊めてほしいと鶴蝶から頼まれた。
確かに夜も遅いし、酔ったまま帰らすのはちょっと不安だ。
鶴蝶だってまだ未成年だしな。
まあそれはいいよ、そういうこともあるからさ。
問題はそこからだ。
デザート食べ終わって帰ると家の前で蘭と竜胆がドンドンとドアを叩いていた。
グロッキーらしい望月と斑目は寺野と鶴蝶に支えられ、私に気づくと悪いなと申し訳なさそうに言う。
なんで家の前にいたままで、蘭と竜胆がドアを叩いているかというと、鍵を忘れて飲みに行ってたらしい。
いやそれもいいんだけど時間と場所考えろよ。
私が帰ってきたことに気づいた蘭と竜胆は「ねえちゃん家出したのかと思ったあああ!」「やだ家出しないでえええ!」なんて私に泣きついた。
うるせえ、とにかくうるせえ。
泣きつくふたりをそのままに、家に上がれば今度はふたりは「いかないでええ!!」としがみつく。
そんな判断できねえんなら飲むんじゃねえ。
遠慮なくふたりの首根っこを掴んで家の中に引きずり上げた。
痛いと言われても知るか、ちゃんとズボン履け、ベルトしろ、見せパンすんな。
容赦ねえなと笑う寺野は廊下に望月を放置して、そのままリビングへ。
鶴蝶も廊下に斑目を置いて寺野に続いた。

「飲むのはいいけどやること考えろっつーの。近所迷惑」

「ごめんなさい!もう騒がないから離して!!」

「運ぶならねーちゃんの抱っこがいい!!」

「わがままか、リビングまで引きずってやる」

「やだああああああ!」

「いやああああああ!」

リビングまで辿り着いて蘭と竜胆を放った。
それから廊下に放置されたふたりも同じように引きずる。

「あ!?姐さん!待ったこれケツ痛え!!」

「なんでオレここにいんの!?姐さんケツとれちゃう!!」

「取れちまえ。寺野、鶴蝶オマエらちゃんと最後まで面倒見ろよ」

「重いんだよこいつ」

「すみません、酔い醒めるかと思って」

べちゃ、と望月と斑目をフローリングで横たわる蘭と竜胆の上に放って大きく息を吐いた。
おい寺野、酒ねえかなって冷蔵庫開けるんじゃねえよオマエの家じゃねえから。
フローリングで蹲って頭痛えと唸る半ケツ四人を横目に台所へ向かう。
ちゃっかり缶チューハイと缶ビールを出した寺野は棚から適当にスナック菓子を取ると食卓に座ってひとりで飲み始めた、自由か。
コップを寺野と私以外の人数分出して、そこに水を注いでリビングに戻る。

「悪いな姐さん」

「鶴蝶飲めないのに行ったの?」

「……えっ、と」

「……」

「……」

「飲んだなオマエ」

「すみません!!つい!ぐえっ!!」

持っていたトレーで鶴蝶の腹に一発入れれば鶴蝶はそのまま蹲る四人の仲間入りをした。

 

まあ泊まるっていうんで酔いも醒めただろう頃合を見てそれぞれ順番に風呂に入るように促した。
ひとりずつだと時間かかるから三人ずつな、蘭と竜胆と望月、斑目と鶴蝶と寺野で分けて入れさせる。
人選?体格差、広い風呂で三人入れなくはないけど体格差考えねえとこいつら絶対騒いで終わるだろ。
先に風呂を終えた斑目と鶴蝶、寺野は竜胆の部屋に置いていった自分の寝間着を着ていた。
ほんとこいつらお泊まり会の準備万端かよ。
私も今日は夜通しの作業はしないから、とりあえず台所を片付ける。
寺野は酒強い、うちに置いてあった缶チューハイと缶ビール全部空けた。
まあ私が飲むわけじゃないしな、私が寝静まった頃に蘭と竜胆が飲んでたくらい。

「姐さん、手伝うか?」

「もう終わるからいいよ」

ソファーで大口開けて寝ている寺野と斑目に蘭か竜胆の部屋から持ってきた毛布をかけて鶴蝶が台所に顔を出す。
もうこの際どこで寝てもいいよ、私の部屋じゃなけりゃ。
なんか飲む?と鶴蝶に聞けばお茶でと返ってきた。
寝る前にコーヒー飲もうとしていたのでお湯は沸いてある、マグカップにお茶のティーバッグを入れてそこにお湯を注いだ。
自分のマグカップと鶴蝶に渡すマグカップを持ってリビングに行く。

「酒飲むのくらい成人するまで我慢しろ未成年」

「つい……でもあまり美味しくなかったな」

「未成年に酒はもったいねえからだろ」

「姐さんは飲んだりするのか?」

「あまり飲まないよ。飲むのは個展やイベントの最終日に打ち上げで飲むだけ」

賑やかな雰囲気は得意じゃないし。
つけっぱなしになっているテレビの音量を落とし、適当にチャンネルを変えた。
国営でやってる自然のドキュメンタリー、こういうの創作意欲が掻き立てられるから好きなんだよな。
ふと、マグカップを持った鶴蝶はぽつりと口にする。

「……あいつが生きてりゃ、美味い酒飲めたかな」

「……かもね」

そうじゃなくてもうちで飲んでたけれどな、あのクソガキ。
それにしても今風呂に入ってる三人遅いな、まだ酔い醒めてなかったかな。
少し声かけに行くか、と中身が半分残ったマグカップをテーブルに置いたところでバタバタと蘭と竜胆、少し遅れて望月がリビングに駆け込んできた。

「ねーちゃん!!こいつねーちゃんのシャンプー使った!」

「怒って!!モッチーからねえちゃんのシャンプーの匂いすんのやなんだけど!!」

「すんませんよく見てないで使っちまいました!!」

「ツッコミどころあり過ぎるけどオマエらうるせえんだよ」

思わず飛び蹴りした自分にまだ若いのかなと感じた。
その後、ソファーで寝ている寺野と斑目はそのままに望月と鶴蝶は蘭の部屋へ、蘭と竜胆は私と寝る!と駄々を捏ねていたけれどうるさいので引きずって竜胆の部屋に放り投げる。
たまには静かに夜を過ごせってんだ。
私もシャワーで済ませて部屋に戻ると、放り投げたはずの蘭と竜胆が私の布団に潜り込んで寝ていたので大きく溜め息を吐いた。
私?静かに寝たいから誰もいない竜胆の部屋で寝るわ。
次の日、朝からねえちゃんが!ねーちゃんがいない!!と騒ぐ声で目が覚めたとだけ言っておく。


親戚のおねえさん
酔っ払い四人を引きずった、鍛えた腕力が活きた。
飲むのはいいけど近所迷惑なんだよ静かにしろ。
次の日朝からうるせえんだよと竜胆くんの枕を蘭くんの顔に投げた。

灰谷兄弟
成人した!酒飲も酒!!と酔って帰ったらおねえさんに引きずられた。
腰パンしてベルト緩く締めていたので引きずられたら廊下のフローリングで摩擦されて痛い目見た、多分赤くなってる。
おねえさんの部屋で寝ていればねえちゃん来るよなーなんてふたり揃って布団に潜り込んでいたけれどおねえさんは竜胆の部屋へ。
竜胆くんの枕はひとつしかなかったので蘭くんにだけ投げられた。

六破羅単代メンバー。
多分寺野くんは年上だよなーと思った、多分お酒強い。
望月くんと斑目くんは見事に酒に飲まれて引きずられた。
鶴蝶くんはオレらしかいねえから飲んで平気だって!と飲まされたけどおねえさんにバレてトレーの餌食になった。
灰谷家でお泊まり会するのがおそらく好き。
ちなみに望月くんからおねえさん愛用のシャンプーの匂いがそこはかとなく香っていた、フローラルの香り。

2023年7月28日