「ねえちゃん無理すんなよ」
「まだ骨くっついてねえんだから」
「いつもなら相手の骨折るふたりに心配されんの違和感」
「それとこれとは話が別!」
「大将もねーちゃんのことよろしくな」
「名前行こうぜ」
「適当にお土産買ってくるからいい子に留守番しててよ」
「オレらもう十八!!」
「子どもじゃねえから!!」
今日はいい天気だなぁ、のんびり歩くにはちょうどいい。
イザナと出かける予定で、イザナがうちまで迎えに来た。
バイクには乗れるけれど、大将にしがみつくの危なくない?と言い出した蘭と竜胆によってイザナのバイクはうちに置いて六本木をふらつくことに。
折れちゃいるけどしがみつくくらいはできると言い張ったけど今回はふたりに却下された、まあ仕方ないか。
腕骨折してから一週間、いろいろあったけど今は平穏だ。
私の腕折りやがったクソガキとそのバイク運転してたクソガキは警察へ、私も事情聴取とかあったけれど私のキレっぷりに警察の皆さんに取り押さえられそうになったのは記憶に新しい、当たり前だろ利き腕いってんだぞ、直接クソガキ共と顔合わせてねえのに取り押さえられそうになるって何事よ。
蘭と竜胆、それからいつもの天竺メンバーはあの次の日にしっかり吊し上げた。
望月と武藤は誰よりもビビり散らかしていたとだけ言っておく、まああんだけ図体でかいから高いところから吊るされる経験ねえだろうしな、あ、普通の人間は吊るされるような真似自体しねえか。
一番泣いて謝っていたのは鶴蝶、吊るしてすぐ気絶したのは斑目。
蘭と竜胆とイザナは逆さまにしておいた、逆さまにした中なら竜胆が一番泣いていたかもしんない、いや蘭も泣いていたけど。
イザナはけろりと涼しい顔してたな、その分かなんなのかわかんねえけど会う度にくっつき虫だ。
ちなみにその現場に三途春千夜とかいう武藤の腹心らしいやつが来たけど、吊るされた武藤見て助けることはなくむしろ清々しい顔して帰っていった、もっとやってください、やる時はオレ呼んでください、なんて連絡先渡されたけど。
なんかぶっ殺してやるくらいの気持ちだったけど、武藤が吊るされてそんな気しないくらい晴れたらしい、よかったな武藤、オマエの命が無事なのは私がオマエを吊るしたからだってよ。
あとイザナと佐野の擦れ違い問題。
イザナにやり過ぎたら止めてほしいと佐野家に連れて行かれ、案の定というかなんというか、佐野家の道場で喧嘩始めた。
異母兄弟と思っていたのは佐野とエマ、けれどそれが真実ではないと知っていたのはイザナ。
そりゃ擦れ違うわ、気の済むまでやれ。
お互いボロボロで、でもお互い憑き物が落ちたような顔になったからよしとする。
改めて佐野真一郎っていう佐野とエマの兄で、イザナの慕っていた人のお墓参りもして、その前でイザナが私を紹介したのはちょっと恥ずかしかった。
最後に花垣、私は何もしてないのに、誰よりも泣きじゃくって、ただありがとうを何度も繰り返して帰っていったんだよ。
私がやったのはクソガキ共を吊し上げたことなんだけどな、なんで感謝されたんだろう。
私が知らないところで何か変わったんかな。
私は何も変わってねえけど。
「名前寒くねえ?」
「大丈夫。蘭と竜胆にこうやってめちゃくちゃもこもこにされたし」
もう三月になるってのに都内は寒い。
コートは着ていたのに蘭と竜胆がマフラーやら手袋やら持ってきてもこもこにされた。
イザナはバイクで来てたから防寒対策しっかりした服装だ。
適当にふらふらと店に入ってお互いに似合いそうな服やらアクセサリーやら見たり、店頭販売しているシュークリームとかクレープとか食べ歩きしながら進んでいく。
違う味だからお互い一口交換したりもしたけどイザナの一口がでかい、まあそんなに食べれないから助かるな。
「イザナ、クリームついてるよ」
「取って」
「はいはい」
ペーパーナプキンで口元を拭ってやればイザナは満足そうに笑った。
子どもっぽいなあと思ったけど、その可愛らしいところも好きなのでいっか。
のんびりとお店を見て、食べ歩きして、気がつけば夕方だ。
イザナに夜どうするのか聞けば、私を送ったら帰ると言っていたのでどうせなら泊まればと提案する。
泊まるのなんて今さらだからな。
「……名前と寝たい」
「いいよ。ついでに帰る前に新しいパジャマと枕でも買ってく?」
なんならお揃いにしようよ、と言えばイザナが嬉しそうに表情を緩めた。
夕飯はどうするか聞けば、うちで食べてくって言ったので、イザナのパジャマと枕買ったら帰ろうか。
さっそく衣料量販店に入り、メンズのコーナーでイザナのパジャマを選ぶ。
イザナは鮮やかな色も似合うだろうけど、淡い色が一番似合うと思うんだよな。
肌褐色だし、淡い青や紫なんて似合いそう。
私が手に取った服をイザナに当ててあーでもないこーでもないと選ぶ姿を見てか、イザナはとても満足そうだ。
「名前はパジャマ何着てんの」
「適当なTシャツとジャージ。寒い時はスウェットにしてる」
「あ、これメンズとレディースペアだってさ。これにしよう」
そんなイザナが持ってきたのは可愛らしいペアのパジャマだ。
スウェットタイプ、まだ肌寒いこの時期にはぴったり。
ただ、デカデカとハートマーク入ってんだけどイザナはそれでいいのか……あっいいんだ、嬉しそう。
じゃあそれにしようか、とそのパジャマを買って今度は枕。
これはあっさりと決まった、やけに大きい気もするけど。
「こんだけ大きかったら一緒に並んで寝れるだろ、オレが腕枕してもいいけど」
ってことらしい。
まあなんでもいいけど、イザナがいいんなら。
あとは蘭と竜胆にお土産を買えば終わり。
お高いケーキをいくつか買った、夜ご飯のデザートになるな。
どれか持つよ、と声をかけたけどイザナは買ったもの全部を手に持ち、空いている手で私の無事な方の手を握った。
所謂恋人繋ぎ、こうすると私より年下の男の子なのに手は大きいな。
イザナのお願いもあって繋いでいる手は手袋を外してある。
お互い冷たかったけど、そのまま歩いていれば自然と温かくなった。
灰谷兄弟の親戚のおねえさん
黒川イザナとお付き合いしている世界線。
関東事変から一週間くらい過ぎた今は平和な世界。
折られた腕は三角巾で吊るしていたりいなかったり、腕は吊るしておかないと痛くなるし浮腫むので吊るすように灰谷兄弟に言われている。
片腕でも吊し上げるくらいできる人。
関東事変からいろいろあったけど今は平穏な毎日をイザナくんと送っている。
この後家でご飯食べてイザナくんと寝た(健全)。
黒川イザナ
おねえさんとお付き合いしている。
おねえさんに吊るされたり佐野家と和解したり怒涛の一週間だったけど今は平穏。
毎日のようにおねえさんと会っている、今日はデート。
関東事変後に逆さまに吊るされたけど新鮮だなあってちょっと楽しんでいた。
佐野家とお話し合いの時におねえさん連れてって見守ってもらったし、真一郎くんのお墓の前でおねえさんを紹介した。
おねえさんとお揃いのパジャマ買えて嬉しい。
この後灰谷家でご飯食べておねえさんと寝た、おねえさんが寝た後にこっそりちゅーしたりしてるかも。
灰谷兄弟
関東事変後に天竺メンバー共々吊るされた、逆さま、竜胆くん大泣き、蘭くんも泣いてた。
おねえさんの腕の完治がまだまだ先なので家事は手分けしてやっている、少しはご飯作れるようになったよ!!
天竺メンバー
関東事変後に吊るされた。
佐野家
イザナくんとお話し合い(物理含む)して和解。
じゃああの人オレらの姉ちゃんになるんだな。
けれど佐野くん、この後自宅に帰らなくなるんだよ。
ヒント、東京卍會は解散する。