もしも黒川イザナとそういう関係になっていたら③

「名前さん!!オレを鍛えてください!」

「いきなり何事かと思えば花垣じゃん」

「はァ?オレの名前になんの用?オマエらも何連れて来てんだよ」

「こいつ勢いやべーんだもん」

「ねーちゃんに吊るされたわけでもないのにぐちゃぐちゃに泣いてっから」

「つまり竜胆は私にぐちゃぐちゃに泣かされたい……?」

「言葉の綾です!」

「流れるように吊るされるの決定じゃんウケる」

「ウケねえから兄ちゃん!」

今日はいい天気だなぁ、夜に雨だってさ。
久しぶりに会った花垣に早々深々と頭を下げられた。
目が点になる、つーか鍛えてくださいってどういうこと、私別に何も鍛えるようなことねえんだけど。
カフェのテラス席でイザナとお茶してたら蘭と竜胆が花垣を連れてきた。
まあ座んなよと促せば近くの席から椅子を持ってきて三人が腰かける。
花垣から聞いた話によると、万次郎が関東卍會の総長をしていると最近知ったらしい。
待って私も初耳。
イザナと蘭と竜胆を見れば、言ってないからと言われた。
ちなみに蘭と竜胆は六破羅単代とかいうチームに属しているんだよ、イザナは不良からは引退して龍宮寺と乾がやっているバイクショップの手伝いをしている。
イザナは二年前に私を巻き込んだからもう不良から足洗った、完全に洗えたかどうかと聞かれればたまに絡まれることはあるんだけどね、その度に返り討ちにしてるらしいけど。
で、花垣は万次郎を止めたいんだって。
そのために仲間探しをしているけれど、今の元東京卍會の見たら巻き込んじゃいけないと思い、強くなるために手っ取り早く私に鍛えてもらおうと……いやなんで私?
話の途中途中であ、と口を開けるイザナにパンケーキを食べさせながらうーんと頭を捻る。
だって、万次郎が家に寄り付かなくなってしばらく経つんだよ。
必要なもの持って家を出る時にイザナが駆けつけて止めたらしいけど、結局喧嘩になった、で、イザナも万次郎もボロボロになったけど止められなかった。
エマなんか大号泣だった、そりゃそうだわ。
せっかくイザナと万次郎が和解して、これからって時だもんな。
でも、イザナが止められなかった万次郎を花垣が止めるかあ……大変だな。

「そこで私に白羽の矢が立つ理由がわからん」

「稀咲と半間を吊るしたり沈めたりした名前さんしかいないと思って……!」

「そういやあいつら今なにしてんの?」

「どこでどう仕入れたか知らねえけど私の個展やイベントの手伝いに来るよ、蘭と竜胆がいない時に」

「知らねえんだけど!」

「言ってねえから、イザナは知ってるよね」

「名前の前でボコったら三人でオブジェにされた」

「ですよねー……」

「だよなー……」

「さすがに同情します……」

大変だったんだぞ、半間無駄にタッパあるから、前に蘭と竜胆を逆さにしたテラスから逆さに吊るすのは骨が折れた、一度骨折れてんけど。
煙草を口にした竜胆の近くに灰皿を置いてやり、どうしたもんかと思案する。
だってさー、私がそこに入るのって違くない?
佐野家のことも私は基本的に傍観だ。
だってそれは佐野家とイザナの問題だったから。
やり過ぎたら止めてくれとは言われたけれど、止める必要ねえなと思ってたし。
仮に、仮によ?
それがうちでやってたら吊し上げるわ、だって現場私の家、迷惑被るの私。
一般人の私にできることって少ないからさ。
……おい、今全員一般人ってなんだっけって言ったろ。
稀咲と半間がイザナにボコボコにされてたのを止めて吊し上げたのはそこが私の個展を開いているギャラリーだったからなんだぞ。
そもそもね、鍛えるも何もねえんだわ。
これ普通だから。

「蘭と竜胆のいるところに頼めばいーじゃん、強いんでしょ?そこの頭」

「マイキー並に強いんだろうけど、元東京卍會を潰すために東京に来たやつだからなあ」

「つーかサウスぜってー話聞かねえよ」

「じゃあこうすれば?名前のいる前で乱闘起こせばいい。そうすれば揃ってシバかれるから丸く収まんだろ」

「……大将」

「なんて命知らずなこと言うんだよ……」

「オレはやんねーからオレ吊るされねえし」

「逃げたよこの大将」

「ずっる」

「私が吊るす前提で話をするな。花垣もそれだって顔すんじゃねえ」

なんだっけ、関東卍會と六破羅単代と、あと梵だっけ?
私を置いてどう三天と呼ばれる三チームを誘き寄せるか話してんけど、一般人よ?私一般人?
でも万次郎に対して思うことがないわけじゃねえのも確か。
身内に不良がいるからそういうやつらとも関わりあるけれどさ、感性は普通なの。
なんで和解して、これから新しく関係を築くって時に万次郎が家を出て、東京卍會を解散させて、新しく関東卍會を創ったのかわからない。
人の心って複雑だから、他人からは到底理解できねえもんなんだよ。

「ねえ花垣。万次郎を止めて、それは万次郎のためになんの?」

「……マイキーくんが、このまま悪の道を進むのは見過ごせないです。そのために、オレは戻ってきました」

「そっか」

万次郎のためか。
決して強くはないだろうけど、そういうまっすぐなところは蘭や竜胆、イザナだって持ってないな。
それが良いのか悪いのかはわからない、そのまっすぐさは自分も苦しめるだろうに。
でも万次郎がなんでこういうことななってるのかも、こいつはわかってんのかもな。
エマだってイザナだって、東京卍會だって知らない、佐野万次郎のことを。

「じゃあやるならさっさとやろうぜ、蘭と竜胆が六破羅の総代を煽れよ。そうすりゃ関東卍會はあっさり来んだろ」

「梵は?」

「マイキーが目的なら梵いなくてもよくね?」

「ねえちゃんが吊るす人間がオレらとマイキーになるわけだ……」

「兄ちゃん、遠い目しないで」

「だから私が吊るす前提なんとかしろよ」

知ってっか?これフラグっつーんだよ。
何度目だこのフラグ。

 

「もう私も三十路なんだからクソガキ共の喧嘩に介入するのいい加減にしてほしいんだが?」

「姉ちゃん!姉ちゃん地面逆さまになってる!!」

「逆さまになってんのはオマエだよ万次郎。久しぶりだねー元気ィ?」

「元気!!元気だった!元気だったけどもう元気なくなる!!」

「いやあ万次郎軽いなー、ちゃんと飯食ってんの?つーかオマエらはいつも話し合い足りねえな前に言ったろうが」

「……もううちの総代が無双じゃなくてねえちゃんが無双でいいよ」

「ところで足下の三途生きてんの?ねーちゃんの蹴り諸に腹に入ったけど」

足下の三途?生きてる生きてる、今動いてないだけで。
本当にクソガキ共やりやがった。
私の前で乱闘起こしやがった。
往来じゃねえだけ良心的?何言ってんだ一般人巻き込んだ時点でオマエら良心ねえだろ吊るすぞ。
あっもう吊るしてたわ、とりあえず万次郎だけ。
唖然とする関東卍會と六破羅単代。
六破羅単代の見知った顔はやっちまったかーなんて顔して天仰いでいるけどオマエらもこうなるんだよ何他人事にしてんだ。
いつもしないようなにっこりと人受けする笑顔で逆さまの万次郎を見れば、万次郎は涙目で私を見た。
それから私の後ろにいるイザナを見てキッと睨む。

「姉ちゃん連れてくんのは卑怯だぞイザナ!」

「連れてきてねえもん。たまたま、偶然、奇遇なことに、オマエらが名前の前で乱闘始めたんじゃねーか」

「そんな偶然あってたまるか!姉ちゃんいるならやらねえよ!!」

何のことかわかりませんと肩を竦めるイザナ。
そうだな、万次郎の言うことはごもっともだわ。
ちなみに今の体勢、高みの見物していた万次郎を高いところから私が片手で足首持ってる体勢。
廃工場って便利だよな、足台になりそうなモンたくさんあって。
万次郎に近づいた時に三途が割り込んで来たけど、私の顔見た瞬間真っ青になって固まったからその隙に蹴らせてもらった。
イザナ仕込みの蹴りですもんで、イザナ程威力なくても鳩尾に入れば問題ねえな。
関東卍會の方では九井だっけ?そいつがやべー女来てるからオマエら動くなよ!なんて言ってる。
誰がやべー女だ普通の絵師だっつの、一般人。
六波羅単代では蘭と竜胆を始めとする元天竺メンバーが頭含めて止めていた。
一番怒らせちゃなんねえ人だからぜってー動くなよ!って言ってんだけど、だから私一般人。
花垣が真っ青になりながらこちらへやって来たので、万次郎を花垣に投げつければ花垣はその勢いに負けて尻餅をついたけどしっかりと万次郎を受け止める。

「た、タケミっちィ……オレ生きてる?生きてるぅぅぅ?」

「い、生きてます!五体満足!!」

「なんだよあの姉ちゃんんんん」

「オマエのお義姉ちゃん」

「普通の一般人」

「うるせえ!!」

イザナと私の言葉に噛み付くも、万次郎は花垣に泣きついていた。
終わりでいい?もう帰っていい?
関東卍會は総長がこんなんになってるからか、特に騒ぎ立てる様子もない、というか息すら殺している。
反対に六破羅単代は……なんかでっかいのが私の前に来ていた。

「おいおいマイキー殺りに来たってのにババアがしゃしゃってんじゃねえぞ」

「あっサウス馬鹿!返り討ちされんぞ!!」

「やめとけって!ねーちゃんやめたげて!!」

処していいなこれ。
とっくのとうに完治した利き腕を思い切り振りかぶってそいつの腹に向けて振り抜いたとだけ言っときゃ十分かな。
後から駆けつけた梵とかいうチームが花垣に泣きつく万次郎と私の前に倒れたでっかいやつを見て顔を真っ青にした。

「……何この状況」

それな、私もそう思うよ。
後日、この状況がどうなったかはまた別の話で。


灰谷兄弟の親戚のおねえさん
黒川イザナとお付き合いしている世界線。
マイキーくん止めるために巻き込まれたのでいろんな期待にお応えしてマイキーくん吊し上げた。
軽い万次郎なら片手で余裕だわー。
この後流れるように巻き込んだイザナくん、灰谷兄弟、花垣くんが吊るされた。
描写はなかったけれど、左手薬指にはシルバーリングつけてた。

黒川イザナ
おねえさんとお付き合いしている。
天竺解散して今では龍宮寺くんと乾くんのところでお手伝いしている。
解散しても不良に絡まれるし、おねえさんも絡まれるかもなーってことでおねえさんに蹴り技レクチャーした、とんでもねえことをした戦犯。
この後吊るされたけど、またマイキーくんと話し合いの場ができたので安心。
描写はなかったけれど、左手薬指にはシルバーリングつけてた。

灰谷兄弟
偶然花垣くんと出会して泣きつかれたのでおねえさんに会わせた。
もうイザナくんとおねえさんの仲は認めているので何も言わない。
流れるようにおねえさん巻き込んだので吊るされた。

花垣武道
未来からタイムリープしていた。
元東京卍會のみんなを巻き込めない……と思ったら灰谷兄弟と出会したので名前さんに会わせてください!と泣きついた。
これでもうマイキーくん止まった……のかな?いや止まったなこれ、見てて酷い公開処刑だったと後に語るしその前におねえさん巻き込んだので吊るされる、泣いた、怖かった。

佐野万次郎
みんなを傷つけないように……と東京卍會解散して関東卍會創ったらどうしてこうなった。
吊るされた、泣いた、怖かった。

三天
寺野くんは一撃で沈められた。
元天竺メンバーは止めたのになーと知らん顔、みんな吊るされますよ。
三途くんも一撃で沈められた。
九井くんはおねえさんがどんな人なのか関東事変で知っていたので他の関東卍會を止めていた。
梵はみんな真っ青、とんでもねえおねえさんがいた。

元黒幕と元共犯
罪悪感からこそこそおねえさんのお手伝いに来ていた。
イザナくんにボコボコにされておねえさんに吊るされた経緯がある。
これからも頻繁にお手伝いに来そう、そのうちマネージャーとかしてくれ。

2023年7月29日