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左の肩から手首にかけての激痛で目が覚めた。
年頃の女の子にしては酷い声を出したと思う、医工騎士の人たちが何人か駆けつけてくれたから。
痛い痛い痛い痛い。
なんでこんなに痛いんだっけ?
焼ける。
焼けるような、そんな痛み。
苦しい苦しい。
ぼろぼろと涙が溢れるくらい辛くって辛くって。
誰にかはわからない、ただ無意識に伸ばした手。
しっかりと、その手を掴んでもらって、握ってもらって、大丈夫、と優しく声をかけてもらって……
少し安心して、鎮静剤で意識を失った。
それが、昨日だか一昨日のことだったと思う。
今度は痛みも何も無く、あるのはぼーっとした気怠さ。
霞がかかったような頭のまま周りを見渡した。
左の肩から手首は包帯でグルグル巻かれている。
右腕には点滴の針が刺さっていて、それを辿るとパックに入ってるなにかの薬が一定のスピードで落ちていた。

「……痛くない」

「あれ、起きてら」

「シュラ」

「よ、大丈夫か?」

シュラは近くの椅子に腰かけると、紙袋を私に差し出す。
あ、これ美味しいって同級生が話してたお菓子。
点滴をしている右手で慎重に受け取って、ごそごそと中身を取り出した。
おお、外装可愛い。

「ん?なんかちっちゃいのも入ってる……」

しかも、これ包装的に日本のじゃない……どゆこと。

「お前の大好きな聖騎士サマからだよ」

「うっそマジで!!」

開けていいかな!?
開ければー?
可愛らしい包装紙を丁寧に開いて、綺麗な箱も丁寧に開ける。
中身はシンプルだけど、何か緑の宝石みたいなものがついたヘアピン。
覗き込んできたシュラにも見せると、よかったな、と私の前髪を摘んだ。

「いいんじゃねえの?随分前髪伸びて鬱陶しそうだしさ」

「んん……でもねぇ」

「平気だって、お前の大好きな聖騎士は気味悪がらねえよ」

日々変色が進む髪も目も気にしていないわけじゃない。
長い前髪をピンで留めたらはっきり見える。
私の視界も、私の目も。

「目の色に合って可愛いよ」

「……シュラがそんなこと言うなんて珍しい」

「うっせ」

イメチェンってことで体調が落ち着いたらつけよう。

2023年7月28日