まあほら、ストレスってやつですよ。
仕事に忙殺されないようにするにはストレス解消するしかないじゃない。
私の場合それが酒に向いたわけで、酒のお供はつまみなわけで、夜遅くに飲むわけで、三十路なわけで。
見事に太りました。
体重計に乗ってみれば3キロ程増量してるし、心なしか少しウエストきついような……ちょっと絞らなきゃ……!
なんて思って飲み行くの控えたり食べるもの調整したりしてたけど、目の前でさ、天谷奴さんが食べるんですよ、高カロリー高糖質のものを!!
ぐぬぬ……と睨みつけながら過ごすこと1週間ほど。
「……太っちまった」
「でしょうね」
何時ぞやの私のように体重計に乗って片手で顔を覆う風呂上がりの天谷奴さんに思わず鼻で笑った。
手を伸ばして脇腹を摘んでみれば、うん、確かに、太りましたね。
まだ人のこと言えないんだけどさ。
意外と落ち込んでいる天谷奴さんを見て、財布の中にある1枚のカードを取り出す。
最近行ってなかったから、どうせなら一緒に行くか?
「天谷奴さん、今度の土日空いてる?」
「どっか行くのか?」
「どうせなら一緒に体動かしに行こうよ。ジムの会員証あるし、天谷奴さんがその場で入会すればいいと思う」
お前ジムなんて行ってたのか、と言わんばかりの目をしてたのでこれ、と会員証を見せる。
市営のジムって意外と設備いいし、月料金じゃないからお手軽に行けるんだよ。
インボディっていう体成分分析装置があるのも素晴らしいね、体の筋肉量とか筋バランスとかわかるから。
警察学校時代やヨコハマ署時代は向こうのジムに後輩と通っては体力つけてたなぁ、懐かしい。
しげしげとそれを見つめた天谷奴さんが「まあ行くのも悪くねえな」と私に渡す。
「それにさ……私たちの年齢考えると痩せるのめちゃくちゃ大変になるんだよ……三十路超えたら痩せなくなるんだよ……脂肪燃焼しない……!!」
「四十路半ばの俺はどうなるんだそれ……」
会話が年寄りとか言ってくれるな、しょうがない。
ちなみに後輩に太った旨を話したらめちゃくちゃクソデカボイスで笑われた、ちくしょう細身のスーツ着れるからって……!
お前いつか会ったら後ろから締めてやるからな。
そんなこんなで次の休みはジムで運動になりました。
……落ち込んでいた天谷奴さんが可愛いなとか思ったのは内緒で。