銀魂

思ったより雁字搦め

自分だけが取り残されて話が進む、事態が悪化する。もっと早く言えばよかった、遠回りして帰ろうって。もっと早く気づけばよかった、嫌な感じがするって。なんだろう、怖いのか。手が足が震える、歯がガチガチと音がなる。怖い、怖い。けれど、他にもうひとつ…

続いてくれたらどんになにいいか

ソファーでテレビを観ながら視線をに向ける。万事屋に居候というか身を置くようになってから10日は経った。恐らく記憶喪失のあいつは毎日拙い手付きで持っていた刀の手入れをして、縋るようにそれを握りしめる。名前もわからないほどの記憶喪失たァ何があっ…

名前を教えて

冷たい、痛い。温かい、柔らかい。自分は冷たいけれど何か温かいものに腕を回している。何故か体が痛いけど、自分の顔のすぐ近くにある柔らかいものに気を取られる。ふわふわしてる、気持ちいい。それに埋めるように顔を寄せると、くすぐってェよ、と声がした…

それは突然終わりを告げる

「お前さんは甘いモンが好きだなァ」船の縁に腰掛け、街で買った包みを片手に団子を頬張っていると高杉さんがやってきた。煙管片手に私を見ると目を細める。包みから1本団子を取り出し、高杉さんに差し出すと首を横に振られた。なんだ、いらないのか。背中の…

知らないこと知っていること

「……なんでここにいるんだろう」「弱気でござるな。いつもは晋助に対して反抗心剥き出しだというのに」「はじめまして状態の人にいきなり田舎から連れてこられて稽古と称してボッコボコにされたら河上さん腹立たないの?それはそれで大丈夫?腹立つの普通じ…

それは現実を突きつける

追われているであろう人が私の横を通り抜けようとする。制止の声、追ってくる黒服複数人、追われてる人の手に不釣り合いな女性物の鞄。あ、ひったくりか。そこから行動をしたのは無意識だった。行動、と言っても大それたことはしていない。ただ、ちょんと足を…

初めてのお散歩

女の子はオシャレしなくっちゃあね!なんて来島さんの着物を借りて、武市さんからお小遣いをもらって、河上さんに夕方までに帰ってくるようにと言われ、高杉さんに部屋から見送ってもらって、私は今江戸にいる。こんなに人がいるなんてすごい、天人にもそりゃ…

わからないだけの子どもでいたくない

「いくらこの時期でも海水浴は風邪引くっスよ」「……それ高杉さんに言ってよ」どうも、私は現在不本意ながら海水浴してます。来島さんは溜め息を吐き、それから眉を下げて笑った。稽古の後半であの人にグーで殴られたついでに甲板から落とされたのだ。なーに…

これはほんの、ほんの一部

鮮血が舞った。パタタ、と生暖かいそれが私に跳ねる。なにしてんだ、と怒鳴られる。何もできてない、動けない。だって、だって。突如として始まった戦闘に、頭が体がついていけない。できるのは自分を拙いながらも守ることで。なんで、なんで、なんでこんなこ…

距離は開けたままで

「うーん……普通ならに怒るんスけど、稽古だったし割りとガチだったから怒るより心配するんスよねェ」「来島さん、そこ痛い」「そッスね、1番強くやられたところッスもんね。頭は?まだクラクラする?」「うん」来島さんがそっと私の顔に湿布を貼る。ついで…

これが日常だなんて嫌だよね

痛かった。泣きたいわけじゃない、痛くて自然と涙が出てくる。口の中が不味い。鉄の味、血の味。世界が狭い。そりゃあ、床に這いつくばっているんだもの、視界が狭いからそう感じるんだろう。自分がしっかりと握っていたはずの鞘に納めたままの刀が目の前に転…