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詐欺師とある日の朝

なああう。猫にしては可愛くない鳴き声に目を開ける。同時にふみふみと体を踏みつけられる感覚に段々と意識が浮上した。体を起こせば、ずしりと私の腹の上を陣取る大きな黒猫と目が合う。おかしいな、寝室のドアは閉めているのに。まだ眠気の残る頭でそう考え…

詐欺師とピアスホールその後

「大分安定したな」「めちゃくちゃ痛かったけどね」痛くして悪かったよ、とごまかす様に頬を撫で、耳に髪をかけて耳に触れる。俺が開けたピアスホールは安定し、腫れが引いてそれなりに過ぎた。ごついファーストピアスにも見慣れ、そろそろ以前渡した別デザイ…

詐欺師とすれ違い

思えば今までこの曖昧な関係が崩れなかったことの方が奇跡だったんだ。私は刑事、彼は詐欺師。心地よいと思った関係ができることなら長く続いてほしいと思っていた。ほんの些細なことでガラガラと音を立てていつ崩れてもおかしくなかったのに。事の発端は私が…

詐欺師と鉢合わせする

雨が降っている。あいにくの天気に自然と溜め息が零れた。そうだ、オオサカの天気予報しか確認していなかった……中王区への出張、とはいえ本当に私が必要だったのかわからない仕事を終え、久しぶりに実家と古巣のあるヨコハマに寄ろう、と新幹線と電車を乗り…

詐欺師が口紅を選ぶ

「あっ、新色出てる」が口紅の並ぶコーナーに立ち寄った。そういうのに興味がないのかと思った日もあったが、そうではないらしい。ごめんちょっと待って、とテスターを手には色を見比べていく。淡い色、鮮やかな色。化粧品を手に取る姿はあまり馴染みがないか…

詐欺師と猫の日(2021ver.)

「うぐっ」ズシッ、そんな衝撃に目が覚めた。目を開けて上体を起こせば、そこには最近が拾ってきたでっけー黒猫が鎮座している。そのくせ黒猫は俺の隣で眠っているを見下ろして、ひっくい鳴き声で甘えるようにに向かって鳴いていた。まず俺の上から降りろ。寝…

詐欺師とバレンタイン

「おら、ハッピーバレンタインな」「……普通逆では?」差し出された紙袋を反射的に受け取ってしまったけど、本来は逆な気もする。もちろん私からも市販ではあるけれどチョコを渡した。みんな大好きゴディバだよ。世は所謂バレンタインデー、職場なんかそれな…

詐欺師っぽい猫が増えた

の家に入ると飼い猫が脱衣所の前でウロウロとしていた。以前も似たようなことがなかったか?あの時は風呂ん中で名前が爆睡していたが、今日はなかなかの叫び声が聞こえる。あとは可愛くねえ猫の鳴き声。飼い猫はカリカリと脱衣所のドアを軽く引っ掻き、俺の顔…

詐欺師の誕生日を祝う(2021ver.)

目を開けると外はまだ真っ暗だった。枕元に置いてあるスマートフォンを手に取れば日を跨いでいることと、真夜中であることを示している。今の姿勢が落ち着かなくてもぞもぞと身を捩っていると、咎めるように腰に腕を回された。「あんまり動くなよ……」眠れな…

体調を崩して詐欺師に看病される

「さん、ひとりで帰れます?」「だいじょぶだいじょうぶ、きょうはあるきだから」「いやいやふらふらしとるやん」「いざとなったらタクシーよぶから」昨日容疑者追っかけた時にバケツ1杯の水をかけられたのがまずかったかもしれない。心配してくれた部下と同…

体調を崩した詐欺師

家に帰ると見慣れた靴が乱雑に脱ぎ捨てられていた。珍しい、揃えて脱ぐのに。その靴を揃えて端へ並べ、自分もパンプスを脱いで上がる。部屋が暗い。いつも電気つけているし、私が帰ってくると一言くらいあるのに。リビングへ進んで電気をつければいつものよう…

弁護士と喫煙所で鉢合わせする

「げっ……」「うわ……」喫煙所に入った瞬間、息抜きが息抜きじゃなくなった。入口を見て、私の姿を確認しては嫌そうに顔を歪める弁護士に私も思わず心の声が漏れてしまったけどお互い様だ。彼から一番遠いところで煙草を取り出し、火をつけて深く息を吸う。…