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詐欺師と鉢合わせする

雨が降っている。あいにくの天気に自然と溜め息が零れた。そうだ、オオサカの天気予報しか確認していなかった……中王区への出張、とはいえ本当に私が必要だったのかわからない仕事を終え、久しぶりに実家と古巣のあるヨコハマに寄ろう、と新幹線と電車を乗り…

詐欺師が口紅を選ぶ

「あっ、新色出てる」が口紅の並ぶコーナーに立ち寄った。そういうのに興味がないのかと思った日もあったが、そうではないらしい。ごめんちょっと待って、とテスターを手には色を見比べていく。淡い色、鮮やかな色。化粧品を手に取る姿はあまり馴染みがないか…

詐欺師と猫の日(2021ver.)

「うぐっ」ズシッ、そんな衝撃に目が覚めた。目を開けて上体を起こせば、そこには最近が拾ってきたでっけー黒猫が鎮座している。そのくせ黒猫は俺の隣で眠っているを見下ろして、ひっくい鳴き声で甘えるようにに向かって鳴いていた。まず俺の上から降りろ。寝…

詐欺師とバレンタイン

「おら、ハッピーバレンタインな」「……普通逆では?」差し出された紙袋を反射的に受け取ってしまったけど、本来は逆な気もする。もちろん私からも市販ではあるけれどチョコを渡した。みんな大好きゴディバだよ。世は所謂バレンタインデー、職場なんかそれな…

詐欺師っぽい猫が増えた

の家に入ると飼い猫が脱衣所の前でウロウロとしていた。以前も似たようなことがなかったか?あの時は風呂ん中で名前が爆睡していたが、今日はなかなかの叫び声が聞こえる。あとは可愛くねえ猫の鳴き声。飼い猫はカリカリと脱衣所のドアを軽く引っ掻き、俺の顔…

詐欺師の誕生日を祝う(2021ver.)

目を開けると外はまだ真っ暗だった。枕元に置いてあるスマートフォンを手に取れば日を跨いでいることと、真夜中であることを示している。今の姿勢が落ち着かなくてもぞもぞと身を捩っていると、咎めるように腰に腕を回された。「あんまり動くなよ……」眠れな…

体調を崩して詐欺師に看病される

「さん、ひとりで帰れます?」「だいじょぶだいじょうぶ、きょうはあるきだから」「いやいやふらふらしとるやん」「いざとなったらタクシーよぶから」昨日容疑者追っかけた時にバケツ1杯の水をかけられたのがまずかったかもしれない。心配してくれた部下と同…

体調を崩した詐欺師

家に帰ると見慣れた靴が乱雑に脱ぎ捨てられていた。珍しい、揃えて脱ぐのに。その靴を揃えて端へ並べ、自分もパンプスを脱いで上がる。部屋が暗い。いつも電気つけているし、私が帰ってくると一言くらいあるのに。リビングへ進んで電気をつければいつものよう…

弁護士と喫煙所で鉢合わせする

「げっ……」「うわ……」喫煙所に入った瞬間、息抜きが息抜きじゃなくなった。入口を見て、私の姿を確認しては嫌そうに顔を歪める弁護士に私も思わず心の声が漏れてしまったけどお互い様だ。彼から一番遠いところで煙草を取り出し、火をつけて深く息を吸う。…

詐欺師とキスをする

別に笑っているわけでも怒っているわけでもないんだよなあ。くっついては離れての繰り返しで。戯れに唇を舐めたり、甘く噛んだり。あまりしないことをするもんだから恥ずかしい、割と本気で。私に構ってほしそうにしていた飼い猫は拗ねたようにキャットタワー…

詐欺師がペディキュアを塗ってくれる

「楽しい?」頭上から聞こえる問いに「おう」と答えれば感心したような声が帰ってきた。刷毛に取るのは赤、それを薄いピンクの爪先に滑らせていく。の視線が一度俺の手元に落ちて、それから賑やかなテレビへ戻った。どうせ内容なんて入ってないだろうし、暇だ…

詐欺師が弱視だった話

ベッドの上で、辛そうに大きな体を丸めて蹲る姿を見るまで確信が持てなかった。天谷奴さんはオッドアイだ。虹彩異色症、ヘテロクロミアともいう。左目は綺麗な澄んだ緑、右目は黒と言うにはもの足りない灰色。医学に関して知らないことだらけなのだけど、オッ…