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なんちゃって転生者のワノ国生活⑬

あの子は大丈夫だろうか。おれの首が斬り落とされたところを見せてしまった。城に火を放ちながら福ロクジュとあの子を探すもあの子はいない。聞けばキングの部下に連れて行かれたのだと言う。あ、あの野郎……!おれが裏切られるのはまだいい、どうせカイドウ…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑫

女がいくらオロチを慕っていようと関係ねェな。前からわかってはいたことだった。おじ様おじ様と、ワノ国では誰よりも何よりも嫌われ憎まれ恨まれているオロチを慕っているのだから。本人もオロチからはそれはそれは大層大事にされている、だからと言って気遣…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑪

キングがあの姫様に簪を贈ったと聞いて酒を噴き出すかと思った。おま、長年ワノ国に腰を下ろしているからわからねェわけじゃねェだろ?ワノ国で、男が女に簪を贈る意味なんて。そこまで本気か、ああでも座敷牢を用意するくらいだからな、本気か。それも戯れで…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑩

私には、慰め方はわかりませぬ。そう言ったあの子はいつものぼんやりとした表情を困ったように戸惑ったように、けれど、悲しそうにしておれの手を握った。小さな手、指先は岩絵具を扱うようになってから薄らと皮膚に色が染み付いている、武器を握ることを知ら…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑨

……変なの、なんか、変な人がいるような気がする。アルデンテって言ってなかった?あのおそば屋さん。パスタじゃあるまいし……なんだか最近、おじ様はピリついている。お城に顔を出した時もどこか疲れているような感じだったし、変だと思う輩には無闇矢鱈に…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑧

ああ、ああ、ああ!とうとうこの日がやってきてしまった!内通者からの手紙を震える手で開く。光月トキの力であの二十年前から飛んで来た、光月の亡霊共。いつか、いつか来るとわかっていた。時を超える能力だって?今となっちゃ存在しようがしなかろうが構わ…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑦

「逃がしちまってよかったのか?」からかうように言えば、キングはなんとも言えない顔をしていた。マスク越しでもわかるだろうが、何年の付き合いだと思ってんだ。座敷牢まで用意して、一度はそこに閉じ込めたものの意外にもキングはあっさりとあの女を手放し…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑥

なんとか牢の中から出られないかと格子から頭を出して猫のように抜け出そうと思ったら嵌った。それをやって来たキングに見られた、めちゃくちゃ呆れたように溜め息を吐かれて頭を押されて戻された。いたたたたたたた。もうちょっと優しくしてもろて。何が不満…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑤

「申し訳ございませんが小紫様、そのような高価なものは受け取れません……」本当に申し訳なく目を伏せる姿になんと答えればいいのかわからなかった。始めはあのオロチが大切にしている姫様だと聞いたから近づこうとしただけなの。きっと、オロチに似て傲慢な…

なんちゃって転生者のワノ国生活④

大したものだと思った。目が見えない、正確には見えても色が見えないその女は墨だけで色が想像できるような絵を描いていた。生まれつきなのだという。だから人に赤だの青だの言われても、それがどんな色なのかわからない、知らない、知っているのはそういう名…

なんちゃって転生者のワノ国生活③

姫様と呼ばれているにしては、あのオロチの血縁にしては、何もかもが似ていなかった。恒例の火祭り一週間前の宴ではオロチの隣に座していたがぼんやりとした表情で黙々と食事を口に運び、時折オロチと言葉を交わす程度。てっきりオロチの権力を盾にしているの…

なんちゃって転生者のワノ国生活②

「ほら見てみろ、あれが桜だ」可哀想だと思った、不憫だと思った。こんなおれの心にも、自分と同じ血の流れる子どもに同情をする心が残っていたらしい。小さな手を繋いで青空にそれはそれは映える綺麗な桜を見せても子どもはきょとんと目を丸くするだけ。子ど…