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なんちゃって転生者の新婚生活⑤

修羅場でござる……思わず呟けば隣にいたお嬢さんがそれな、と深く頷いた。誰が店のナンバーワンキャバ嬢と店のケツ持ち極道がバチバチメンチ切ってると思うのか。きっかけはささやかなものだった。黒炭のお嬢さんがカメラマンとしての仕事でうちの店を訪ね、…

なんちゃって転生者の新婚生活④

キングが熱心に読んでいる雑誌を後ろから盗み見してみた。盗み見しなきゃよかった。なんで事務所で熱心にそんな雑誌読んでんだ、おれの右腕がウエディングフォトの記事を読み込んでいるなんて知りたくなかった。目が合ったクイーンには絶対に話振るなよ、絶対…

なんちゃって転生者の新婚生活③

「えっ!結婚したの!?」「日和、声がでかい」「あっ……ごめんなさい……水臭いじゃない、式に呼んでくれてもよかったのに……」「……式ね、挙げてない」「ちょっとあなたを誑かしたのはどこの馬の骨かあちきに教えてほしいでありんす」「小紫になってるよ…

なんちゃって転生者の新婚生活②

知っているような気がする。私を見る目とか、頬に触れる指の背とか、体に回る腕とか、私の名前を呼ぶ声とか。ただ、知っているより距離が近いような、いや、前も近かったけど……うーん……なんだろう、この感じ。そう思ってはいるんですがね、今いるのタワマ…

なんちゃって転生者の新婚生活①

私の人生、数奇を極めているよな。気がついたらまた現代に生まれてました。しかも驚くなかれ、私の父はおじ様……黒炭オロチだ。いやね、正確には私の伯父なんだけど、私の両親が亡くなって引き取ってくれたんですよ。ちゃんと養子縁組をしたので本当にお父さ…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑮

変じゃないですか、と着替えた女が少し顔を赤くしてそう問う。船にあったもので悪いが着物だとこれから先目立つだろうからな。脛くらいまでのワンピース、ジャケットを羽織らせ、ショートブーツを履かせれば、元とはいえワノ国の姫様なんて思えねェだろ。下ろ…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑭

「日和様、彼女は……」「……お食事持っていったのだけど、食べられないからって突き返されちゃいました」日和様が困ったように眉を下げる。あれから一週間、我々の傷も癒え、立役者の海賊も目を覚ました。けれど、我々と彼女の間にできている壁や溝は厚く深…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑬

あの子は大丈夫だろうか。おれの首が斬り落とされたところを見せてしまった。城に火を放ちながら福ロクジュとあの子を探すもあの子はいない。聞けばキングの部下に連れて行かれたのだと言う。あ、あの野郎……!おれが裏切られるのはまだいい、どうせカイドウ…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑫

女がいくらオロチを慕っていようと関係ねェな。前からわかってはいたことだった。おじ様おじ様と、ワノ国では誰よりも何よりも嫌われ憎まれ恨まれているオロチを慕っているのだから。本人もオロチからはそれはそれは大層大事にされている、だからと言って気遣…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑪

キングがあの姫様に簪を贈ったと聞いて酒を噴き出すかと思った。おま、長年ワノ国に腰を下ろしているからわからねェわけじゃねェだろ?ワノ国で、男が女に簪を贈る意味なんて。そこまで本気か、ああでも座敷牢を用意するくらいだからな、本気か。それも戯れで…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑩

私には、慰め方はわかりませぬ。そう言ったあの子はいつものぼんやりとした表情を困ったように戸惑ったように、けれど、悲しそうにしておれの手を握った。小さな手、指先は岩絵具を扱うようになってから薄らと皮膚に色が染み付いている、武器を握ることを知ら…

なんちゃって転生者のワノ国生活⑨

……変なの、なんか、変な人がいるような気がする。アルデンテって言ってなかった?あのおそば屋さん。パスタじゃあるまいし……なんだか最近、おじ様はピリついている。お城に顔を出した時もどこか疲れているような感じだったし、変だと思う輩には無闇矢鱈に…